Column

コラム
TOP
「下請法」から「取適法」へ

2026/01/09

法改正

「下請法」から「取適法」へ

 

「下請法」から「取適法」へ。 令和7年5月に公布され、令和8年(2026年)1月1日から施行されるこの法律の改正は、単なる名称変更にとどまらない、取引慣行の大きな転換点となります。長年親しまれてきた「下請法」が、「中小受託取引適正化法(略称:取適法)」へと生まれ変わるにあたり、企業が押さえておくべきポイントを整理します。

 


 

1. 名称と用語の変更が示す「対等な関係」
まず注目すべきは法律の名称変更です。「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へと変わります。 これに伴い、従来の「親事業者」は「委託事業者」へ、「下請事業者」は「中小受託事業者」へと呼称が改められます。これは、従来の「上下関係」を想起させる言葉を廃し、ビジネスパートナーとしての「対等な取引関係」を構築しようとする法の意思の表れと言えるでしょう。

 

2. 適用対象の拡大:資本金基準から「従業員基準」へ
実務上の最大の影響は、法の網がかかる範囲(適用対象)の拡大です。 これまでは「資本金」の額だけが基準でしたが、新たに「従業員数」の基準が追加されました。具体的には、資本金要件に該当していなくても、常時使用する従業員数が300人(情報成果物作成・役務提供委託等は100人)を超える事業者は、規制対象の「委託事業者」とみなされる可能性があります。 これにより、資本金を低く抑えていた大規模事業者も規制の対象となり、より多くの中小事業者が保護されることになります。また、対象となる取引に、配送業務などを委託する「特定運送委託」が新たに追加された点も、物流・小売業界にとって重要な変更点です。

 

3. 禁止行為の強化:不当な価格転嫁の禁止と手形払いの厳格化
取引の公正化に向け、禁止行為もアップデートされています。 特に重要なのが「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」です。昨今の物価高騰を受け、受託側からの価格交渉の申し出に対し、協議に応じなかったり、必要な説明や根拠資料を提供せずに一方的に価格を据え置いたりする行為が明確に禁止されます。 また、長年の商慣習であった「手形払い」にもメスが入ります。

 

4. 実務のデジタル化と執行体制の強化
実務面では、発注書面(3条書面)の交付について、受託事業者の承諾がなくとも電子メールなどの電磁的方法で提供できるようになり、デジタル化への対応が進められています。 一方で、違反に対する執行体制は強化されます。公正取引委員会や中小企業庁に加え、各業界を所管する「事業所管省庁」も指導や助言を行えるようになり、業界ごとの実情に即した監視の目が光ることになります。

 


 

今回の改正は、単なるルールの厳格化というよりも、取引関係の「OS(基盤)のアップデート」と捉えるべきでしょう。 これまでの「下請け」という意識を捨て、「受託パートナー」として対等に協議し、適正な価格で取引を行う。令和8年の施行に向け、すべての企業にその意識改革が求められています。