2026/01/09
フリーランス保護法
働き方の多様化が進む中、個人が組織に属さずに働く「フリーランス」というスタイルが定着してきました。しかし、組織としての発注事業者と個人の間には交渉力や情報量の格差があり、報酬の不払いやハラスメントといったトラブルが頻発していたのも事実です。 こうした状況を改善し、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために制定されたのが、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護法)です。令和6年(2024年)11月1日より施行されています。
1. 法律の対象となるのは?
この法律は、基本的にBtoB(事業者間)の取引を対象としています。
• 受注側(特定受託事業者):従業員を使用しない個人、または社長一人の法人など。
• 発注側(特定業務委託事業者):フリーランスに業務委託を行う事業者で、従業員を使用するもの。
2. 取引ルールの適正化
もっとも基本的かつ重要な変更点は、口約束での発注によるトラブルを防ぐためのルールです。
★取引条件の明示義務(第3条) 発注事業者は、業務を委託した際、**「直ちに」**給付内容、報酬額、支払期日などを書面または電磁的方法(メールやSNS等)で明示しなければなりません。 重要なのは、発注側に従業員がいない場合(フリーランス同士の取引など)であっても、この明示義務は適用される点です。
★報酬支払期日の設定(第4条) 発注側(従業員あり)は、成果物を受領した日から60日以内で支払期日を設定し、支払う義務があります。元請けからの支払い待ちなど、発注側の都合による長期の支払い遅延が防がれます。
★ 禁止行為の規定(第5条) 1か月以上の業務委託を行う場合、発注側(従業員あり)には以下の行為が禁止されます。
・受領拒否(正当な理由なく受け取りを拒む)
・報酬の減額(あらかじめ決めた額を無理やり減らす)
・返品(理由なく引き取らせる)
・買いたたき(相場より著しく低い報酬を不当に定める)
・購入・利用強制(指定の商品やサービスを無理に買わせる)
3. 就業環境の整備(安心して長く働くために)
フリーランスを一人の働き手として尊重するための環境整備も義務付けられました。
★ハラスメント対策(第14条) セクハラ、パワハラ、マタハラなどへの相談体制の整備や、事後の迅速な対応といった措置を講じることが義務付けられます。
★ 育児・介護等への配慮(第13条) 6か月以上継続する業務委託の場合、フリーランスからの申し出に応じて、育児や介護と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければなりません(6か月未満の場合は努力義務)。
★中途解除等の予告(第16条) 6か月以上継続する契約を解除したり、更新しない場合には、原則として30日前までに予告する必要があります。また、求めがあれば理由を開示しなければなりません。
4. 違反への対応と相談窓口
もし発注事業者がこれらの規定に違反した場合、公正取引委員会や厚生労働省などが是正に向けた助言・指導・勧告・命令を行うことができ、命令違反には50万円以下の罰金が科される可能性があります。 フリーランス側は、トラブルが生じた際に「フリーランス・トラブル110番」へ相談したり、行政機関へ申し出たりすることが可能です。その際、発注側が相談を理由に契約解除などの不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
この新法は、これまで「自己責任」とされがちだったフリーランスの立場を法的に保護し、公正な取引の土台を作るものです。発注側にはコンプライアンス意識の向上が求められる一方、受注側であるフリーランスも、自身の権利を守るために法律の内容を正しく理解しておくことが重要になります。