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その電子契約、裁判で証拠として使えますか?中小企業が導入前に知っておくべき電子署名法の実務ポイント

2026/07/24

契約法務

その電子契約、裁判で証拠として使えますか?中小企業が導入前に知っておくべき電子署名法の実務ポイント

コスト削減や業務効率化を目的として、契約書の電子化を進める中小企業が急速に増えています。印紙税がかからず、郵送や製本の手間も省けることから、多くの経営者・管理職の方が「紙の契約書からの脱却」を検討していることでしょう。しかし、電子契約サービスを「なんとなく便利だから」という理由だけで導入し、その法的な仕組みを理解しないまま運用すると、いざ紛争が発生した際に契約の成立や内容を証明できないという深刻な事態を招きかねません。本記事では、電子契約・電子署名の法的有効性の基礎から、サービス選定時に確認すべき実務ポイントまで、企業法務の観点から解説します。

電子契約はなぜ「紙の契約書」と同じ効力を持つのか

そもそも日本の法律では、契約は原則として口頭の合意だけでも成立します。書面の作成は、あくまで「合意内容を証拠として残すため」の手段にすぎません。したがって、電子データによって契約内容を記録すること自体は、民法上何ら問題がありません。

問題となるのは「その電子データが、本当に契約当事者の意思に基づいて作成され、後から改ざんされていないことをどう証明するか」という点です。この点を制度的に補強しているのが電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)です。同法第3条は、一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書について、真正に成立したものと推定するという効果を定めています。

つまり、電子契約が紙の契約書と同等の証拠力を持つためには、単に「PDFに合意した」というだけでは不十分で、電子署名法が想定する要件を満たすサービス・運用方法を選択する必要があるのです。

「当事者型」と「立会人型(事業者署名型)」の違いを理解する

電子契約サービスには、大きく分けて2つの方式があります。この違いを理解しないまま「有名なサービスだから安心」と考えるのは危険です。

当事者型電子署名

契約当事者本人が電子証明書を取得し、自らの秘密鍵を用いて署名する方式です。マイナンバーカードや民間認証局が発行する電子証明書を利用します。本人性の担保が強固である一方、契約の相手方にも電子証明書の取得を求める必要があり、導入のハードルが高いという難点があります。

立会人型(事業者署名型)電子署名

現在、中小企業間の取引で広く普及しているのはこちらの方式です。契約当事者はメール認証などで本人確認を行い、実際の電子署名はサービス提供事業者(クラウドサービス事業者)が「立会人」として本人の指示に基づいて行います。導入のしやすさから急速に普及しましたが、事業者が代理で署名するという構造上、本人性の担保レベルが当事者型に比べて相対的に弱いという指摘もあります。

そのため、法務省・総務省・経済産業省は立会人型についても一定の技術的要件(顧客の意思に基づき電子署名が行われたことを示す仕組みなど)を満たせば電子署名法第3条の推定効が及び得るとの見解を示しています。ただし、これは自動的に保証されるものではなく、サービスの認証プロセスの信頼性が問われる点に留意が必要です。

電子契約サービス選定時に確認すべき実務ポイント

電子契約サービスを選ぶ際、価格や知名度だけで決めてしまう企業は少なくありません。しかし、契約は「万が一のトラブル時に効力を発揮してこそ意味がある」ものです。以下の点を必ず確認しましょう。

  • 本人確認の方法:メールアドレスのみの確認か、二要素認証や公的身分証との照合まで行っているか
  • タイムスタンプの付与:改ざん防止と存在証明のため、信頼できるタイムスタンプ局のタイムスタンプが付与されているか
  • ログ・監査証跡の保存:誰が、いつ、どの端末・IPアドレスから同意・署名したかの記録が長期間保存されるか
  • 電子帳簿保存法への対応:契約データを税務上の要件に沿って保存できる仕組みになっているか
  • サービス終了時のデータ移行・保全体制:万が一サービスが終了した場合に、既存契約データを引き出せる保証があるか

特に高額な取引や長期間にわたる継続的契約(フランチャイズ契約、業務委託基本契約など)については、当事者型や、より本人確認の強固なサービスの利用を検討する価値があります。

電子化できない契約・書面交付義務が残る取引に注意

「あらゆる契約が電子化できる」と誤解している経営者の方も少なくありませんが、これは正確ではありません。近年の法改正により多くの分野で書面交付義務の電子化が認められるようになりましたが、業法によっては依然として相手方の承諾など一定の手続を要件とするものや、実務上電子化に馴染みにくいとされる書面が存在します。

例えば、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明書や賃貸借契約に関する書面、特定商取引法上のクーリングオフに関する書面などは、電子化にあたって相手方の承諾取得や表示方法について特有の規制が課されています。自社の業種・取引類型において、契約書の電子化が本当に適法に行えるのか、契約類型ごとに確認しておくことが重要です。

社内での運用ルール整備も忘れずに

電子契約サービスを導入しても、社内の運用ルールが整備されていなければ、かえってリスクを高めることになります。次のような社内体制の整備を併せて検討しましょう。

  • 電子契約の締結権限者(誰が押印=電子署名の実行権限を持つか)の明確化
  • 契約書ひな形・重要条項のレビュー体制を電子契約フローに組み込むこと
  • 相手方が電子契約に不慣れな場合の説明・同意取得プロセス
  • 締結済み契約データのバックアップ・保存管理ルール

特に、電子契約は締結のスピードが速いというメリットの裏返しとして、十分な社内レビューを経ないまま契約が成立してしまうリスクもはらんでいます。フローの利便性と法務チェックの実効性のバランスを取ることが求められます。

まとめ

電子契約・電子署名は、正しく理解し運用すれば、業務効率化とコスト削減を実現する有効な手段です。しかし、その法的有効性は「サービスを使えば自動的に保証される」ものではなく、当事者型・立会人型の違い、本人確認の強度、タイムスタンプや監査証跡の有無、そして契約類型ごとの電子化可否といった要素を踏まえて初めて確保されるものです。特に重要な取引や高額契約については、サービス選定と社内運用ルールの両面から慎重な検討が欠かせません。

自社の契約書の電子化を進めるにあたり、どのサービス・方式が適切か、また既存の契約書フォーマットが電子契約に適しているかご不安な点がございましたら、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。

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