Column
2026/09/04
労働法
カスタマーハラスメント対策は法改正により企業の義務となり、対応を怠ると安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。本記事では御社が今すぐ整備すべき社内体制を解説します。
近年、顧客や取引先から従業員に対する著しい迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題として深刻化しています。従業員がカスハラによってメンタル不調に陥り、休職や退職に至るケースが増加したことを受け、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正により、事業主に対してカスハラ防止措置を講じることが義務付けられることになりました。
従来、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントについては事業主に防止措置義務が課されていましたが、カスハラは「第三者である顧客」からの行為であるため、法的な位置づけが曖昧なまま各企業の自主的な対応に委ねられてきました。今回の法改正は、この空白を埋め、企業に明確な対応義務を課すものです。
特に中小企業では、大企業のような専門部署や相談窓口を持たないケースが多く、経営者自身が制度設計から取り組む必要があります。「知らなかった」では済まされない義務化である以上、早期の理解と準備が求められます。
カスタマーハラスメント対策として企業に求められる措置は、大きく分けて次の4点に整理できます。
これらは単なる努力目標ではなく、法改正後は事業主の義務として位置づけられます。特に相談窓口の形骸化(窓口はあるが実質機能していない)は、行政指導や労働紛争の火種になりやすいため注意が必要です。
カスタマーハラスメント対策を怠った場合、企業は複数の法的リスクにさらされます。第一に、労働契約法上の安全配慮義務違反です。従業員がカスハラによってうつ病等を発症し、企業が適切な対応を取っていなかったと判断されれば、損害賠償請求の対象となり得ます。実際に、顧客からの暴言・威圧的な言動を放置した結果、従業員が精神疾患を発症したとして企業の責任が認められた裁判例も存在します。
第二に、労災認定のリスクです。カスハラによる精神疾患は、心理的負荷の強度によっては業務上災害として労災認定される可能性があり、労災保険料率への影響や企業イメージの毀損にもつながります。
第三に、法改正後は行政による指導・勧告の対象となる可能性もあり、是正されない場合は企業名の公表といった社会的制裁のリスクも否定できません。御社の契約書や就業規則がこうしたリスクに対応できているか、専門家によるチェックを受けておくことが望ましいでしょう。契約関係全般の見直しについては、法律事務所LeONEのような企業法務を専門とする事務所へ相談することも有効な選択肢です。
実際に社内体制を整備する際は、次のステップで進めると効率的です。
制度設計の初期段階から弁護士が関与することで、法的に実効性のある仕組みを構築しやすくなります。社内規程や相談窓口の設計についてお悩みの場合は、無料相談のお問い合わせからご相談いただくことも可能です。
カスハラ対策を実効性のあるものにするためには、就業規則や関連規程への落とし込みが欠かせません。押さえるべきポイントは次のとおりです。
就業規則の変更は労働基準監督署への届出や従業員代表からの意見聴取など一定の手続きが必要となるため、規程改定の段階で専門家のチェックを受けておくと安心です。当事務所の弁護士紹介ページでは、企業法務を担当する担当弁護士のご紹介を掲載しておりますので、あわせてご確認ください。
カスタマーハラスメント対策の義務化は、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、従業員の離職防止やエンゲージメント向上にも直結する経営課題です。義務化後に慌てて対応するのではなく、現時点から相談窓口の設置、対応マニュアルの整備、就業規則の見直しに着手することが、将来的な法的リスクと人材流出の双方を防ぐ最善策といえます。
自社の体制がどこまで法改正に対応できているか不安がある場合は、早めに企業法務の専門家へ相談し、具体的な整備状況を点検してもらうことをおすすめします。