2026/07/09
企業法務
海外の取引先との契約書を締結する際、「相手が用意したフォーマットだから」「取引額がそれほど大きくないから」といった理由で、契約書の細部を十分に確認しないまま署名してしまうケースが少なくありません。特に見落とされがちなのが、準拠法(どの国の法律を適用するか)と裁判管轄(どこで紛争を解決するか)に関する条項です。これらの条項は、実際にトラブルが発生するまでその重要性に気づきにくいものですが、いざ紛争が起きた際には企業の命運を左右しかねません。本記事では、中小企業が海外取引を行う際に知っておくべき契約書上のリスクと、実務的な対応策について解説します。
国内企業同士の取引であれば、契約書に準拠法や管轄裁判所の定めがなくても、日本の法律が適用され、日本の裁判所で争うことができるのが通常です。しかし、取引の相手方が海外企業である場合、話は大きく変わります。
同じ契約内容であっても、適用される法律が日本法か、相手国の法律か、あるいは第三国の法律かによって、契約の有効性、損害賠償の範囲、免責条項の効力などの判断が大きく異なることがあります。例えば、日本法では有効とされる違約金条項が、相手国の法律では「懲罰的」として無効と判断される場合もあります。
契約書に「紛争は相手国の裁判所で解決する」と定められていた場合、たとえ自社に有利な主張ができたとしても、実際に訴訟を提起するには現地の弁護士を雇い、現地の裁判手続きに従い、多くの場合は現地語での対応を強いられます。移動や通訳、現地代理人の費用など、訴訟に至るまでのコストは国内訴訟とは比較にならないほど膨らみます。結果として、たとえ法的には勝てる見込みがあっても、コストと労力を理由に泣き寝入りせざるを得ない企業が多いのが実情です。
海外企業との取引では、相手方が英文の契約書フォーマットを用意し、こちらに署名を求めてくることがよくあります。特に取引開始時は「早く契約を成立させたい」という心理が働き、細部の確認がおろそかになりがちです。
相手方が用意した契約書では、当然のように「準拠法は相手国法、管轄は相手国の裁判所」と定められていることが多くあります。これは相手方にとって有利な条件であり、対等な交渉を経ずに受け入れてしまうと、いざという時に大きなハンディキャップを背負うことになります。
国際取引では、裁判ではなく仲裁による解決を定める契約も多く見られます。仲裁は非公開で手続きが柔軟という利点がある一方、仲裁地(どこで仲裁を行うか)や仲裁機関(どの機関のルールに従うか)によって、手続きの負担やコストが大きく変わります。仲裁地が遠方の第三国に指定されている場合、結局は裁判と同様に大きなコスト負担を強いられることになります。
海外取引を行う中小企業は、以下のポイントを契約締結前に必ず確認すべきです。
準拠法や裁判管轄は、契約交渉の中でも特に「相手方が譲りたがらない」条項の一つです。だからこそ、対等な交渉を行うためには事前準備が欠かせません。
海外取引を検討する段階から、国際取引に精通した弁護士に契約書のひな形をレビューしてもらい、自社にとって最低限譲れない条件(準拠法、管轄、責任制限など)をリスト化しておくことが重要です。これにより、実際の交渉の場面で迅速かつ的確な対応が可能になります。
すべての取引において完璧な条件を求めることは現実的ではありません。取引額や継続性の見込みに応じて、どこまでのリスクを許容できるかをあらかじめ社内で整理しておくことで、交渉の優先順位が明確になり、無用な時間をかけずに合意形成を進めることができます。
海外取引先との契約書における準拠法・裁判管轄条項は、平時にはほとんど意識されることがありません。しかし、いざ紛争が発生した際には、この一文が交渉力、訴訟コスト、そして最終的な結果を大きく左右します。「相手方のフォーマットだから仕方ない」と流してしまう前に、専門家の目を通し、自社にとって不利になりすぎない条件を確保することが、海外展開を成功させるための重要なリスク管理です。
海外取引先との契約書の準拠法・裁判管轄条項について不安がある方、これから海外進出を検討されている方は、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。国際取引に精通した弁護士が、契約書のレビューから交渉戦略の立案まで、貴社の海外展開を法務面からしっかりとサポートいたします。
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