Column
2026/08/27
契約法務
契約書の損害賠償条項は、取引先とのトラブル時に自社がどこまで負担するかを決める重要な規定ですが、多くの企業が内容を十分に確認せず契約を締結しています。この記事では損害賠償条項の見落としがちなリスクと、実務での見直しポイントを解説します。
損害賠償条項とは、契約違反や債務不履行によって相手方に損害が生じた場合に、どちらがどの範囲で賠償責任を負うかを定める条文です。民法上は「債務不履行によって生じた損害」を賠償する義務が原則として発生しますが、この範囲は当事者間の合意によって拡大も縮小も可能です。つまり契約書に何と書かれているかによって、実際に発生する賠償額の上限や対象範囲が大きく変わります。
多くの経営者・管理職の方は、契約書の中でも価格や納期、支払条件といった目に見えやすい条件には注意を払う一方で、損害賠償条項は「トラブルが起きたときの話」として後回しにされがちです。しかし、実際にトラブルが発生してから条文を読み返し、想定外に重い負担を負っていることに気づくケースが少なくありません。契約は締結してしまえば原則として合意した内容に拘束されるため、事後に「知らなかった」では済まされない点に注意が必要です。
契約書の損害賠償条項において、企業側が特に見落としやすいパターンを整理すると、次の3つに集約されます。
これらは契約書のひな形をそのまま流用した際に特に発生しやすい問題です。取引先から提示された契約書をそのまま受け入れてしまうと、内容を精査しないまま自社に不利な条件で締結してしまうリスクがあります。特に取引先側が作成した契約書は、当然ながら取引先に有利な内容で作られている場合が多く、受け取った側が漫然と押印すると、賠償責任の範囲について交渉の余地すら残らないまま契約関係に入ってしまいます。
損害賠償条項に上限がないまま契約を締結した場合、どのような事態が起こり得るでしょうか。例えばシステム開発の受託契約において、成果物に不具合があり取引先の事業に支障が生じた場合、直接の修補費用だけでなく、取引先が被った営業損失や機会損失まで請求される可能性があります。契約金額が数百万円規模であっても、賠償請求額がその何倍にもなるケースは実務上珍しくありません。
中小企業にとって、想定外の高額賠償は資金繰りや事業継続そのものを脅かすリスクとなります。特に受託側(乙)の立場で契約を結ぶ企業は、賠償額の上限を「契約金額の範囲内」などと明確に定めておくことが、経営リスクを管理するうえで欠かせません。逆に発注側(甲)の立場であっても、自社が委託先に損害を与えてしまった場合の負担を想定し、双方にとって公平な水準に賠償条項を調整しておくことが、長期的な取引関係の安定にもつながります。
損害賠償条項をチェックする際、実務上は以下の点を確認することをおすすめします。
自社で契約書のリーガルチェックを行う体制が整っていない場合、契約書の作成・見直しの段階で専門家に相談することが、後々のトラブルを防ぐ近道です。契約書のリスク管理でお困りの際は、企業法務を専門とする法律事務所LeONEにご相談いただくと、自社の取引実態に即したリスク評価を受けられます。
損害賠償条項に問題があると気づいても、「今さら取引先に修正を求めにくい」と感じる担当者の方も多いのではないでしょうか。しかし、契約締結前であれば条項の見直しを提案すること自体は通常の商取引の範囲内であり、交渉を持ちかけること自体が取引関係を損なうものではありません。
交渉の進め方としては、いきなり大幅な修正を求めるのではなく、「賠償額の上限設定」など優先度の高い項目に絞って提案するのが実務的です。取引先にとっても賠償責任の予測可能性が高まるというメリットがあるため、双方にとって合理的な着地点を見つけやすくなります。また、契約書の文言修正について自社内で判断が難しい場合は、弁護士に修正案の作成を依頼することで、取引先にも説得力のある形で交渉を進めることができます。契約交渉や修正案の作成でお困りの際は無料相談のお問い合わせから気軽にご相談ください。
損害賠償条項は、トラブルが起きて初めてその重要性に気づく条文です。しかし、締結後に不利な内容を覆すことは容易ではなく、事前のチェックこそが最も効果的なリスク管理策といえます。自社が発注側・受注側いずれの立場であっても、契約書を締結する前に賠償範囲と上限を確認する習慣を持つことが、経営の安定につながります。
契約書の内容に不安がある場合や、日常的な契約審査体制を構築したい場合は、企業法務の専門家によるサポートが有効です。担当弁護士のご紹介ページでは、契約書レビューを含む企業法務案件の対応実績をご紹介していますので、あわせてご覧ください。契約書は一度締結すると簡単には内容を変更できない以上、締結前の確認に時間をかけることが、結果的に最も コストの低いリスク対策となります。