2026/07/07
労働法
人手不足が深刻化する中、外国人材の受け入れを検討・実施する中小企業が増えています。しかし2027年には技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」へと移行することが決まっており、受け入れ企業には制度理解と体制整備が急務となっています。在留資格の確認を怠ったまま外国人を雇用してしまうと、不法就労助長罪に問われるリスクもあり、経営者・管理職の正しい理解が欠かせません。本コラムでは、企業法務を専門とする弁護士の立場から、外国人材受け入れにあたって中小企業が押さえるべき実務ポイントを解説します。
これまで外国人材の受け入れの中心を担ってきた技能実習制度は、国際貢献という建前と実際の労働力確保という実態が乖離しているとの批判を受け、廃止される方針が固まりました。これに代わって創設されるのが「育成就労制度」です。
育成就労制度は、人材育成と人材確保の両立を制度目的として明確化した点が大きな特徴です。具体的には次のような変更が予定されています。
特に転籍要件の緩和は、これまで「一度受け入れれば長期間定着する」ことを前提に採用計画を立ててきた企業にとって、人材の定着戦略そのものの見直しを迫るインパクトの大きい変更です。
制度移行に伴い、中小企業には以下のようなリスクが生じます。
在留資格の種類によっては就労できる業務内容が制限されています。「技能実習」「特定技能」「育成就労」など資格の種類ごとに従事できる業務が異なるため、資格外の業務に従事させると、企業側が不法就労助長罪(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方)に問われる可能性があります。「知らなかった」では済まされず、故意がなくても処罰対象となり得る点に注意が必要です。
育成就労制度では一定期間経過後の転籍が認められるため、これまでのように「受け入れれば長期間働いてもらえる」という前提が崩れます。採用コストを回収する前に転籍されてしまう事態を避けるため、早期からの定着施策が求められます。
監理団体や登録支援機関を通じた受け入れであっても、実際に就労させる企業(実習実施者・特定技能所属機関に相当する立場)には、賃金の適正な支払い、労働時間管理、安全衛生の確保など、日本人従業員と同等の労務管理責任が課されます。
制度の詳細は今後の政省令で確定していきますが、中小企業が今から準備できることは多くあります。
監理団体や登録支援機関の選定を誤ると、サポート不足によるトラブルが企業側の責任として跳ね返ってくることがあります。契約内容を精査し、支援業務の範囲や責任の所在を明確にした契約書を締結することが重要です。
外国人材を受け入れるにあたっては、既存の就業規則が想定していない事態が生じることがあります。例えば、宗教上の理由による休暇取得、母国への一時帰国のための長期休暇制度、食事や礼拝スペースへの配慮などです。
また、育成就労から特定技能への移行、特定技能からの永続的な雇用継続を見据えた場合、キャリアパスを明示した人事制度を整備しておくことで、優秀な人材の定着率を高めることができます。就業規則の見直しは、単に法令違反を避けるための守りの対応にとどまらず、人材確保の競争力を高める攻めの投資と位置づけるべきでしょう。
技能実習制度から育成就労制度への移行は、単なる制度名称の変更ではなく、受け入れ企業に対して人材育成・定着・適正な労務管理という新たな責任を求めるものです。転籍要件の緩和により人材の流動化が進む中、中小企業には「選ばれる受け入れ企業」になるための体制整備が求められています。在留資格の確認体制、就業規則の見直し、賃金・評価制度の透明化など、対応すべき事項は多岐にわたります。
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