2026/07/13
企業法務
「フリー素材だと思って使っていた画像が、実は著作権で保護されたものだった」「競合他社のホームページの文章を参考にして、そのまま似た表現を使ってしまった」――こうしたトラブルは、決して大企業だけの話ではありません。むしろ、法務専門部署を持たない中小企業ほど、日常業務の中で無自覚に著作権侵害を犯してしまうリスクが高いのが実情です。
SNSでの情報発信が経営戦略の一部となった今、画像や文章の「借用」は驚くほど手軽に行われています。しかし、著作権侵害が発覚すれば、損害賠償請求だけでなく、企業の信用そのものを傷つけることになりかねません。本記事では、中小企業の経営者・管理職の方に向けて、著作権侵害のリスクとその防ぎ方を実務的な視点から解説します。
近年、著作権侵害に関する紛争は増加傾向にあります。その背景には、次のような事情があります。
特に中小企業では、広報・マーケティング担当者が兼務であることが多く、著作権に関する知識が十分でないまま業務を進めてしまうケースが目立ちます。「知らなかった」では済まされないのが著作権法の厳しさであり、経営者としてはこのリスクを正しく認識しておく必要があります。
著作権者から侵害を指摘された場合、企業は以下のような請求を受ける可能性があります。
損害賠償額は、侵害された著作物の性質や利用態様、企業規模などによって大きく変動しますが、商用利用と判断されれば数十万円から数百万円規模の請求に発展することも珍しくありません。
著作権法は刑事罰も定めており、故意による著作権侵害には「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科」という重い罰則が規定されています(著作権法119条)。法人に対しても両罰規定により3億円以下の罰金が科される可能性があります。悪質なケースでは刑事告訴に至ることもあるため、軽視できません。
SNS時代においては、著作権侵害の指摘は瞬く間に拡散します。「あの会社は他人の作品を無断使用した」という情報が広まれば、取引先や顧客からの信用を失い、採用活動にも悪影響が及ぶことがあります。金銭的な賠償以上に、この信用毀損リスクこそが中小企業にとって最も深刻な打撃となり得ます。
フリー素材サイトを利用する際は、必ず利用規約を確認する必要があります。「商用利用不可」「クレジット表記必須」「加工禁止」など、サイトごとに条件が異なります。無料=自由に使えるという思い込みは危険です。
Google画像検索などで見つけた画像をそのまま自社サイトやSNSに掲載する行為は、権利者の許諾がない限り著作権侵害に該当します。「みんなやっているから大丈夫」という認識は通用しません。
単なるアイデアや事実の紹介にとどまらず、文章表現そのものを模倣した場合は著作権侵害となる可能性があります。特に、サービス説明文やコラム記事の「言い回し」を似せてしまうケースには注意が必要です。
アルバイトスタッフや業務委託先が「自分で作った」と称して納品した画像・デザインが、実は第三者の著作物を流用したものだったというトラブルも発生しています。制作物の出所については、契約段階で権利関係を明確にしておくことが重要です。
著作権トラブルを未然に防ぐためには、次のような社内体制の整備が有効です。
特に、外部の制作会社やフリーランスに業務委託する場合は、成果物の著作権の帰属や第三者権利侵害がないことの保証について、契約書で明確に取り決めておくことが極めて重要です。口頭やメールのやり取りだけで済ませてしまうと、後々のトラブルの火種になります。
万が一、自社が著作権侵害の指摘を受けた場合は、次の対応を心がけましょう。
初動対応を誤ると、かえって紛争が長期化・拡大するおそれがあります。特に、SNS上で公に指摘を受けた場合は、対応の遅れや不誠実な態度がさらなる炎上を招くこともあるため、迅速かつ適切な対応が求められます。
著作権侵害は、故意でなくても法的責任を問われる可能性がある、企業経営における重大なリスクの一つです。特にSNSやウェブサイトでの情報発信が日常化した現在、素材の出所管理や契約関係の整備を怠ることは、経営そのものを揺るがしかねません。
予防策の整備はもちろん重要ですが、いざトラブルが発生した際に迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことも同様に大切です。自社だけで判断が難しいと感じた場合は、早めに専門家の知見を活用することをおすすめします。
著作権をはじめとする知的財産権のリスク管理について具体的なご状況でお悩みの方は、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。
また、社内の素材利用ガイドライン策定や契約書のチェック体制の構築など、予防法務の観点からのご支援も行っております。企業法務サービスの詳細はこちらからご確認いただけます。