2026/06/27
取適法
2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス保護法、取引適正化法)が施行されました。この法律は、フリーランス(個人で仕事を受ける事業者)と発注事業者との間の取引を適正化し、フリーランスの就業環境を整備することを目的としています。
施行から約2年が経過した現在、多くの企業でフリーランスや業務委託先の活用が定着しています。しかし、法律の要件を十分に把握しないまま旧来の慣行を続けている中小企業も少なくありません。違反した場合には行政指導・勧告・企業名の公表といったペナルティが科される可能性があり、早急な対応が求められます。
本記事では、フリーランス保護法の核心部分を整理し、中小企業の経営者・管理職が今すぐ確認すべき5つの実務ポイントをわかりやすく解説します。
まず前提として、誰に対してどのような義務が発生するのかを明確にしておきましょう。
フリーランス保護法における保護対象は「特定受託事業者」です。これは、従業員を使用しない個人事業主または一人法人(役員が1人のみの法人)を指します。具体的には次のような方々が該当します:
注意すべきは、法人格の有無ではなく「従業員がいるかどうか」が基準になる点です。法人であっても従業員なし・役員1名のみであれば保護対象となります。
一方、義務を負う側は「特定業務委託事業者」です。これは従業員を使用して業務委託を行う事業者を指します。つまり、1人でも従業員を雇用している会社がフリーランスに業務委託をする場合、この法律の義務が発生します。
多くの中小企業は従業員を抱えていますので、「フリーランスへの外注は一切使っていない」という会社を除き、ほぼすべての中小企業がこの法律の適用対象と考えてよいでしょう。
フリーランス保護法が定める最も基本的な義務が、取引条件の明示義務です。
従来、中小企業ではフリーランスへの依頼を口頭・メールで済ませていたケースが多くありました。しかし本法により、業務委託の際には書面または電磁的方法(メール・PDF等)で以下の事項を明示することが義務付けられています。
特に重要なのは、口頭での合意では義務を履行したことにならない点です。「いつもお願いしている先だから」「急ぎだったからメールで一言送った」という対応は法律違反になる可能性があります。
取引開始前または開始と同時に、上記事項が記載された業務委託契約書・発注書・注文請書を必ず交付しましょう。既存のフリーランス取引先がある場合も、改めて書面を整備する必要があります。テンプレートを作成し、運用ルールを社内で統一することをお勧めします。
フリーランス保護法では、報酬の支払いに関して明確なルールが設けられています。
成果物を受け取った日(給付受領日)から60日以内に報酬を支払わなければなりません。これは下請法の支払期日規制(60日以内)と同様の考え方ですが、フリーランス保護法では業種や取引の種類を問わず広く適用されます。
もし60日を超える支払いサイクルを慣行としている場合は、直ちに見直しが必要です。たとえば「月末締め・翌々月末払い」のように実質的に60日超となる支払い条件は違反となります。
支払期日を過ぎた場合、フリーランスは発注者に対して遅延損害金(年率14.6%)を請求できます。これは民法の法定利率(年3%)を大きく上回る高率であり、支払い遅延のコストは非常に大きくなります。
受領後に一方的に報酬を減額したり、発注側の都合による返品をしたりすることも禁止されています。「品質が少し気に入らなかったから報酬を下げた」「使わなかったから返した」といった対応は、法律違反となる可能性があります。
フリーランス保護法の特徴のひとつが、6か月以上の継続的な業務委託に対して課される追加義務です。
継続的業務委託を行う場合、発注者(特定業務委託事業者)はハラスメントに関する体制整備が義務付けられます。具体的には次のような措置が求められます:
従業員に対するハラスメント対策は労働施策総合推進法等で義務付けられていましたが、フリーランスについても同様の対応が求められる点が重要です。外注先だから対策不要、という認識は通用しなくなりました。
6か月以上の継続的業務委託を、発注者側の都合で解除・不更新(契約満了での打ち切り)とする場合、原則として30日前までに予告しなければなりません。突然の契約打ち切りは違法となる可能性があります。
また、解除の理由についてフリーランスから開示を求められた場合は、理由を開示する義務があります。「都合により終了します」という通知だけでは不十分なケースがあります。
フリーランス保護法は単なる取引規制にとどまらず、就業環境の整備という観点からの規定も含まれています。
継続的業務委託において、フリーランスが妊娠・出産・育児・介護を理由に業務体制の配慮を申し出た場合、発注者は必要な配慮をするよう努めなければなりません(努力義務)。たとえば、納期の延長、業務量の調整、オンライン会議への対応などが考えられます。
フリーランスが法律に基づく権利を行使したこと(支払遅延の指摘、ハラスメントの申告など)を理由に、契約の解除や不当に不利な扱いをすることは禁止されています。
「文句を言ってきたから来期の契約を打ち切った」「指摘を受けたから仕事量を減らした」といった対応は、法律違反となります。フリーランスが適切に権利を主張できる環境を整えることが、発注側にも求められています。
フリーランス保護法への対応は、「知らなかった」では済まされません。行政機関による調査・指導の対象となり、企業名公表や業務改善命令が出る可能性もあります。以下のチェックリストで自社の対応を確認してください。
「フリーランスへの発注は少ないから関係ない」と思っている場合でも、1件でも対象取引があれば義務が発生します。この機会に社内の業務委託フローを総点検することをお勧めします。
フリーランス保護法への対応や業務委託契約書の整備についてご不明な点がある場合は、ぜひLeONE法律事務所への無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。また、契約書レビューや社内規程整備を含む企業法務サービスの詳細は企業法務サービスの詳細はこちらをご覧ください。