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中小企業でも内部通報制度は必要?公益通報者保護法の実務対応と体制整備のポイント

2026/06/29

企業法務

中小企業でも内部通報制度は必要?公益通報者保護法の実務対応と体制整備のポイント

はじめに:「うちには関係ない」が命取りになる時代

「内部通報制度なんて大企業の話でしょ」――中小企業の経営者や管理職の方から、こうした声をよく耳にします。しかし、2022年6月に施行された改正公益通報者保護法は、一定規模の事業者に内部通報体制の整備を義務付けており、中小企業も決して無縁ではありません。

さらに、取引先や金融機関から「コンプライアンス体制を教えてください」と求められるケースも増えています。内部通報制度の有無が、ビジネスチャンスの獲得や取引継続に影響する時代になっているのです。本記事では、公益通報者保護法の概要と中小企業が押さえておくべき実務対応のポイントをわかりやすく解説します。

公益通報者保護法とは何か

公益通報者保護法は、企業内の不正行為を内部告発した従業員(公益通報者)を、解雇や不利益取り扱いから守るための法律です。2004年に制定され、2022年6月に大幅改正・施行されました。

改正前との主な違い

  • 常時使用する労働者が300人超の事業者:内部通報体制の整備が義務
  • 常時使用する労働者が300人以下の事業者:整備に向けた努力義務
  • 従事者(窓口担当者)の守秘義務が明確化(違反した場合に刑事罰あり)
  • 通報者への不利益取り扱いの禁止対象が拡大(退職後1年以内、派遣労働者も含む)

「300人以下だから努力義務だし、後回しでいい」と考えるのは危険です。努力義務とはいえ、行政機関から指導・助言・勧告を受ける可能性があります。また、制度がないことで不正の発覚が遅れ、取り返しのつかない損失につながるケースも少なくありません。

内部通報制度がない会社で起きるリスク

内部通報制度を整備していない会社では、次のようなリスクが高まります。

1. 不正の長期化・拡大

横領、パワハラ、品質偽装、会計不正などの問題が社内で「見て見ぬふり」の状態になりやすく、発覚した時には被害が甚大になっているケースがあります。早期に察知・対処できる仕組みがなければ、経営者自身が問題を把握できないまま時間が経過してしまいます。

2. 外部通報・マスコミ対応の混乱

社内に相談窓口がなければ、従業員は行政機関やマスコミへの外部通報に走ります。外部通報は企業イメージを大きく損ない、一度報道されると信頼回復には多大なコストがかかります。内部で解決できる問題が社外に流れる前に「安心して言える場所」を用意することが重要です。

3. 取引先・金融機関からの評価低下

コンプライアンス体制の整備状況を取引条件に組み込む企業が増えています。「内部通報制度がない」「社内規程が整備されていない」という事実は、取引先や銀行の審査においてマイナス評価につながり得ます。

4. 従業員の離職・採用難

「問題を相談できる場所がない」「ハラスメントを訴えても揉み消される」という評判が広まると、優秀な人材が集まらなくなります。内部通報制度は、従業員が「守られている」と感じる安心感の基盤となるものです。

中小企業が整備すべき内部通報体制の3つのポイント

では、具体的に何を整備すればよいのでしょうか。規模に応じた現実的なアプローチを紹介します。

ポイント1:通報窓口の設置

まずは社内に通報・相談できる窓口を設けることが最初のステップです。窓口の形式としては次のものが考えられます。

  • 社内担当者型:コンプライアンス担当者や総務部門を窓口にする。コストは低いが、直属の上司が問題当事者の場合に機能しにくい
  • 社外弁護士・外部機関型:法律事務所や専門機関に窓口を委託する。通報者が安心して相談しやすく、中立性が確保される
  • ハイブリッド型:社内と社外の両方を設ける。義務対象事業者(300人超)には特に推奨される

中小企業であれば、まず社内担当者を置くだけでも構いません。重要なのは「通報・相談できる場所がある」という事実と、その周知です。

ポイント2:通報者の秘密保護と不利益取り扱いの禁止を明確にする

通報窓口を設けても、「報告したら報復される」と従業員が感じていては機能しません。次の点を社内規程や就業規則に明記し、全従業員に周知することが不可欠です。

  • 通報者の氏名・部署など個人情報を厳守すること
  • 通報を理由とした解雇・降格・減給・嫌がらせを禁止すること
  • 匿名での通報も受け付けること(可能な範囲で)

また、従事者(窓口担当者)には守秘義務があり、改正法ではこれを破った場合に刑事罰が課されることが明記されています。担当者に対する定期的な研修も必須です。

ポイント3:通報を受けた後の調査・対応フローを整備する

通報を受けた後、どのように調査し、どう処分・是正するかのフロー(手順)がなければ、窓口があっても「ザル」になります。最低限、以下のフローを文書化しておきましょう。

  • 通報受理後○日以内に受理通知を行う
  • 事実確認調査の担当者と手順を定める
  • 是正措置・処分の決定権者を明確にする
  • 通報者へのフィードバック方法を定める
  • 記録の保存・管理方法を定める

弁護士に調査を委託できる体制を事前に整えておくと、重大案件が発覚した際に迅速に動けます。

社内規程・就業規則との整合性チェックが重要

内部通報制度を新たに導入する際には、既存の就業規則・コンプライアンス規程・ハラスメント防止規程と矛盾・重複がないかを確認することが大切です。

よくある問題として、次のようなケースがあります。

  • 就業規則に「社内情報の外部漏洩禁止」とあるが、外部機関への公益通報との整合性が取れていない
  • ハラスメント相談窓口と通報窓口が別々に設置されており、従業員がどこに相談すればいいかわからない
  • 通報者保護の規定が就業規則に明記されておらず、「報告したら懲戒」と受け取られかねない条項が残っている

これらは法的リスクにつながるため、弁護士によるリーガルチェックを受けながら一体的に整備することをお勧めします。

まとめ:内部通報制度は「守り」ではなく「経営の武器」

内部通報制度は「法律に言われたから仕方なく整備するもの」ではありません。不正の早期発見・是正による損失防止、従業員エンゲージメントの向上、取引先・金融機関からの信頼獲得――これらすべてにつながる、経営の武器です。

特に中小企業は、不正が発覚した際の体力が大企業より弱く、一度の事件が会社の存続を左右しかねません。だからこそ、規模が小さいうちから「問題を早期に拾い上げられる仕組み」を整えておくことが、長期的な経営安定につながります。

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