Column
2026/08/15
労働法
退職代行を使った突然の退職連絡が増えており、企業側の初動対応を誤ると未払い賃金や損害賠償トラブルに発展しかねません。この記事では、退職代行への正しい対応手順と、トラブルを防ぐ就業規則整備のポイントがわかります。
退職代行とは、労働者本人に代わって「退職する意思」を会社側に伝えるサービスです。SNSやニュースで頻繁に取り上げられるようになったこともあり、特に若手社員や新卒社員を中心に利用が広がっています。
大企業であれば人事部門が窓口となり、ある程度定型的な対応フローが整っていることも多いですが、経営者や管理職が直接コミュニケーションを担う中小企業では、退職代行業者からの突然の連絡に戸惑い、感情的な対応をしてしまうケースが少なくありません。しかし、退職代行への対応を誤ると、パワハラや不法行為として企業側が損害賠償請求を受けるリスクもあるため、冷静かつ適法な対応が求められます。
退職代行業者からの連絡を受けた際、最初に行うべきは以下の確認です。
退職代行を利用されたからといって、通常の退職手続きが省略されるわけではありません。就業規則に定められた退職の手続き(退職届の提出、引継ぎ対応など)に沿って、淡々と事務手続きを進めることが重要です。感情的に本人へ直接連絡して翻意を促すような対応は、かえってトラブルを拡大させる原因になります。
民法上、期間の定めのない雇用契約は、原則として退職の意思表示から2週間が経過すれば終了します(民法627条)。退職代行を通じて有給休暇の消化を求められた場合、残りの出勤日数が少ないケースでは、企業側が時季変更権を行使する余地が実質的にないことも多く、基本的には請求を受け入れざるを得ない場面が多くなります。
また、未払い残業代や退職金の請求が同時になされることもあります。金銭請求については感情的に拒否するのではなく、就業規則や賃金台帳などの資料に基づき、法的根拠の有無を確認したうえで誠実に対応する必要があります。
退職代行を利用された場合でも対応をスムーズに進めるためには、あらかじめ就業規則を整備しておくことが有効です。特に以下の項目を明確にしておきましょう。
これらを事前に規定しておくことで、退職代行を通じた急な退職であっても、企業側が場当たり的な対応に追われることを防げます。
退職代行業者には、大きく分けて「弁護士が運営するもの」「労働組合が運営するもの」「民間企業が運営するもの」の3種類があり、それぞれ対応できる範囲が異なります。
特に注意すべきは、弁護士資格を持たない民間の退職代行業者(非弁業者)は、退職の意思を伝達することはできても、未払い賃金や退職金などの金銭的な条件について会社側と「交渉」することは、弁護士法72条が禁じる非弁行為に該当するおそれがある点です。
企業側としては、連絡してきた相手が金銭交渉の権限を持つ主体(弁護士または適法な労働組合)であるかを確認し、権限のない業者からの一方的な金銭要求にその場で応じることは避けるべきです。ここでの見極めを誤ると、後日「合意した」「していない」という水掛け論に発展し、紛争が長期化するおそれがあります。
退職代行の利用は今後も広がっていくことが見込まれる社会的な流れであり、「うちの会社には関係ない」では済まされない時代になっています。突然の退職代行連絡に慌てないためには、就業規則の整備、退職手続きのマニュアル化、そして管理職への教育を通じて、冷静かつ適法に対応できる社内体制をあらかじめ整えておくことが何より重要です。
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