Column
2026/09/11
企業法務
スタートアップが投資契約書の内容を十分に確認せずに資金調達を進めると、将来の経営権や資金繰りに深刻な制約を受けることがあります。本記事では、資金調達時に見落としがちな契約条項と対応策を解説します。
資金調達の場面では、投資家から提示される投資契約書のひな形をそのまま受け入れてしまう経営者が少なくありません。しかし投資契約書には、経営権の一部を投資家に譲る条項や、将来の資金調達・事業運営に制約を課す条項が含まれていることが一般的です。契約内容を十分に理解しないまま署名すると、次の資金調達ラウンドで不利な条件を突き付けられたり、重要な経営判断のたびに投資家の承諾を求めなければならなくなったりするおそれがあります。
特に創業間もない企業では、資金を早く確保したいという焦りから契約書の細部を確認しないまま調印してしまうケースが目立ちます。投資契約書は一度締結すると簡単には変更できないため、御社の将来の選択肢を狭めないよう、締結前の段階で内容を精査することが不可欠です。
投資契約書のうち、特にトラブルの原因になりやすい条項は次の5つです。
これらの条項は投資家保護の観点から一般的に設けられるものですが、その範囲や発動条件が会社にとって過度に不利になっていないかを個別に確認する必要があります。
日本のスタートアップの資金調達では、普通株式ではなく優先株式(種類株式)を発行するケースが増えています。種類株式の設計を誤ると、後続ラウンドでの資本政策が複雑化し、次の投資家との交渉が難航する原因になります。
特に注意すべきは、複数の投資ラウンドを経るごとに優先分配の順位や希薄化防止の計算方法が積み重なり、創業株主の実質的な取り分が想定より大きく目減りする「優先株式の積み上げ効果」です。資本政策表(キャップテーブル)を作成し、将来のExit時点でのシミュレーションを行った上で条件交渉に臨むことが重要です。
投資契約書と併せて締結されることが多いのが株主間契約です。株主間契約には、株式の譲渡制限、役員の選任・解任ルール、デッドロック(意思決定が行き詰まった場合)の解消方法などが定められます。
また、共同創業者が複数いる場合には、投資契約とは別に創業者間の権利関係を定める「ファウンダーズ契約」を早期に締結しておくことも有効です。創業者の離脱時における株式の買戻し条件(ベスティング条項)を定めておかなければ、離脱した創業者が高い持株比率を保持し続け、その後の資金調達やモチベーション設計に支障をきたす事例が実務上多く見られます。
投資家は出資の前提として、法務・財務・労務にわたるデューデリジェンス(DD)を実施します。DDで契約書の不備や許認可の欠落、労務コンプライアンス上の問題が発覚すると、出資条件の悪化や調達自体の撤回につながりかねません。
御社の側でも、資金調達を検討し始めた段階で以下の点をあらかじめ整理しておくことをおすすめします。
契約書の整備状況に不安がある場合は、DDが始まる前に専門家によるチェックを受けておくことで、交渉を有利に進めやすくなります。契約書の作成・見直しでお困りの場合は、企業法務を専門とする弁護士へのご相談をおすすめします。法律事務所LeONEでは、資金調達を目指す企業の実務に即した契約書対応をご提案しています。
投資契約書のレビューは、投資家から契約書のドラフトが提示された直後、つまり条件交渉が本格化する前の段階で弁護士に依頼するのが理想的です。条件がある程度固まってから相談すると、修正できる余地が限られてしまいます。
また、資金調達は一度きりではなく、シリーズA、シリーズBと複数回にわたって実施されることが一般的です。初回の契約設計が甘いと、後続ラウンドでの交渉に悪影響を及ぼすため、資本政策全体を見据えた継続的な法務サポートを受けられる体制を整えておくことが望ましいといえます。
投資契約や株主間契約の内容についてご不安がある企業担当者の方は、早い段階で専門家にご相談ください。無料相談のお問い合わせから、投資契約書のレビューについてご相談いただけます。担当弁護士の詳細については担当弁護士のご紹介もあわせてご覧ください。