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「初回500円」の定期購入、実は法律違反かも――特定商取引法・景品表示法から見るサブスクEC運営の実務ポイント

2026/07/31

景表法

「初回500円」の定期購入、実は法律違反かも――特定商取引法・景品表示法から見るサブスクEC運営の実務ポイント

「初回500円」「今なら実質無料」――ネット通販やサブスクリプションサービスの広告でよく目にする表現です。しかし、こうした定期購入・サブスク型ビジネスの販売手法は、近年の法改正により、表示や解約導線のわずかな不備が行政処分や集団的な消費者トラブルに直結するリスクをはらんでいます。中小企業が自社ECサイトやサブスクサービスを運営する際に、どこに注意すべきかを実務の視点から整理します。

なぜ今、定期購入・サブスクの表示が問題になっているのか

定期購入・サブスク型のビジネスモデルは、単発の売り切り型商材に比べて顧客単価(LTV)を高めやすく、多くの中小企業やD2Cブランドが導入しています。しかし、その一方で「安さにつられて申し込んだら、実は毎月自動的に商品が届き、解約したくてもできない」という消費者トラブルが全国の消費生活センターに数多く寄せられており、国民生活センターも繰り返し注意喚起を行っています。

こうした背景から、2022年6月施行の改正特定商取引法により、通信販売における定期購入契約の表示規制が大幅に強化されました。あわせて、割引率や「実質無料」といった価格表示については景品表示法の観点からも厳しくチェックされる時代になっています。「知らなかった」では済まされない規制であり、行政処分を受ければ社名が公表され、事業の信用そのものに関わります。

定期購入・サブスク型ビジネスに適用される法律の全体像

定期購入・サブスク型ECを運営するうえで、押さえておくべき法律は主に次の3つです。

  • 特定商取引法(通信販売規制):申込みの最終確認画面における表示義務、誇大広告の禁止、意に反した申込みをさせる行為の禁止などを定めています。
  • 景品表示法:実際の内容や取引条件よりも著しく有利であると消費者に誤認させる表示(有利誤認表示)や、商品の内容について誤認させる表示(優良誤認表示)を禁止しています。
  • 消費者契約法:事業者の一方的な条項(極端な違約金条項や解約制限条項など)が消費者にとって不当に不利益な場合、当該条項が無効となる可能性があります。

これらは重なり合って適用されるため、「特商法だけ確認すればよい」という発想では不十分です。表示画面ひとつをとっても、複数の法律の要求を同時に満たす必要があります。

特定商取引法が求める「最終確認画面」の表示義務

改正特定商取引法では、通信販売において消費者が申込みを行う直前の「最終確認画面」に、以下の事項を明確に表示することが義務付けられています。

  • 分量(数量、回数など)
  • 販売価格・対価(定期購入の場合は総額または各回の代金)
  • 支払の時期・方法
  • 引渡し・提供時期
  • 申込みの撤回・解除に関する事項(解約の条件・方法・違約金の有無など)

特に定期購入契約の場合、「初回500円」という価格だけを大きく表示し、2回目以降の代金や最低契約期間、解約条件を小さな文字や別ページに記載する手法は、規制の典型的な違反パターンとして摘発対象になっています。最終確認画面では、定期契約であることそのものが消費者に明確に認識できる態様で表示されていなければなりません。

「意に反する申込み」への該当リスク

消費者が定期購入であることを認識しないまま申込みボタンを押してしまうような画面設計は、「人を誤認させるような表示」として特定商取引法違反となるだけでなく、消費者はその契約自体の取消しを主張できる場合があります。これは事業者にとって、売上の帳消しにとどまらず、集団的なクレームや返金対応という大きな実務負担につながります。

景品表示法との関係――「初回500円」表示が有利誤認表示になるケース

「初回500円」「実質無料」といった価格表示は、それ自体が禁止されているわけではありません。問題となるのは、実際の取引条件(2回目以降の代金総額、最低継続期間、解約条件)を消費者が正しく認識できないような表示の仕方です。

景品表示法上の有利誤認表示に該当するかどうかは、次のような観点から判断されます。

  • 初回価格の強調に対し、総支払額や継続条件の表示が著しく小さい、または離れた場所にあるか
  • 「いつでも解約可能」と表示しながら、実際には電話のみの受付で長時間つながらない、解約フォームが極端に見つけにくいなど、実態と表示が乖離していないか
  • 「今だけ」「今なら」といった強調表示が、実際には常時同じ条件で提供されているものではないか(二重価格表示の問題)

消費者庁は近年、定期購入商法に対して景品表示法に基づく措置命令を相次いで出しており、化粧品・健康食品・サプリメント業界だけでなく、幅広い業種のEC事業者が対象となっています。広告表現を制作会社や代理店に一任している場合でも、責任を負うのは商品を販売する事業者自身である点に注意が必要です。

行政処分・トラブル事例に学ぶ実務対応

実際に問題となった事例には、共通したパターンがあります。

事例パターン1:解約導線を意図的に複雑にする

マイページ上に解約ボタンを設置せず、電話窓口に限定したうえで、繁忙期はつながりにくい状態を放置していたケース。「いつでも解約可能」という広告表示と実態が乖離しているとして問題視されました。

事例パターン2:総額表示の欠如

最終確認画面において、初回価格のみを大きく表示し、2回目以降の代金や最低利用期間(例:4回の継続購入が条件)を、スクロールしないと見えない位置に小さく記載していたケース。

事例パターン3:解約時の高額な違約金請求

「いつでも解約可能」としながら、実際には途中解約時に高額な違約金(残存期間分の代金相当額など)を請求する条項を設けていたケース。消費者契約法上の不当条項として無効と判断される可能性もあります。

これらの事例に共通するのは、「表示上のキャッチコピー」と「実際の契約条件・解約実務」との間にギャップがあるという点です。マーケティング部門が作成する広告表現と、法務・カスタマーサポート部門が把握している実際の運用実態を、定期的に突き合わせて確認する体制が欠かせません。

中小企業が今すぐ着手すべきチェックリスト

自社の定期購入・サブスクサービスについて、以下の項目を確認してみてください。

  • 最終確認画面に、分量・総額・支払時期・解約条件がひとつの画面内で明確に表示されているか
  • 「定期購入である」ことが、消費者が一見して認識できる表示になっているか
  • 解約手続きの方法・所要日数が、申込み時と同程度に分かりやすく案内されているか
  • 広告のキャッチコピーと、実際の契約条件・解約実務に齟齬がないか
  • 違約金・解約手数料の条項が、消費者契約法上不当に高額でないか
  • 景品表示法上の合理的根拠資料(価格の比較対象、割引率の算定根拠など)を保管しているか

これらは一度整備すれば終わりではなく、キャンペーンやLPを新設するたびに確認すべき事項です。特に、外部の広告代理店やLP制作会社に表現を任せている場合は、契約条件の説明を最終確認画面に反映させる社内チェック体制を構築することが重要です。

また、行政処分を受けた場合には社名・違反内容が公表され、レピュテーションへの影響は売上減少以上に長期化する傾向があります。表示規制への対応は「守りのコスト」ではなく、顧客との信頼関係を維持するための投資と捉えることが、持続的な事業成長につながります。

自社の定期購入・サブスクサービスの表示や規約が現行法に適合しているか不安がある方、行政からの指摘や消費者からのクレームを受けて対応にお困りの方は、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。特定商取引法・景品表示法対応を含む企業法務サービスの詳細については、こちらのサービスページもあわせてご覧ください。