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ステマ規制とは?企業が知るべき景品表示法違反リスクと対応

2026/09/24

景表法

ステマ規制とは?企業が知るべき景品表示法違反リスクと対応

2023年10月施行の景品表示法「ステマ規制」により、インフルエンサー広告で「広告である」旨の明示を怠ると、発注企業が措置命令や社名公表の対象となる恐れがあります。企業が押さえるべき実務対応を整理します。

ステマ規制とは何か—景品表示法における位置づけ

「ステマ規制」とは、2023年10月1日に施行された景品表示法上の規制で、正式には同法第5条第3号に基づく内閣府告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定を指します。簡単に言えば、企業がインフルエンサーや第三者に依頼して商品・サービスを宣伝してもらう際、それが「広告」であることを消費者が一目で分かるようにしなければならない、というルールです。

ここで経営者・担当者が特に理解しておくべきポイントは、この規制の名宛人が「表示を行った事業者」、つまり広告を発注した企業自身であるという点です。投稿を行ったインフルエンサー個人が直接処分の対象になるわけではなく、依頼主である御社が景品表示法違反の責任を問われる立場に立ちます。「広告代理店やインフルエンサーに任せているから自社は関係ない」という認識は、規制の実態とは大きくずれていると言わざるを得ません。

景品表示法は本来、事業者自身が行う虚偽・誇大な表示を規制する法律でしたが、SNSの普及に伴い、企業が第三者を介して間接的に消費者へ影響を与える手法が急速に広がりました。口コミやインフルエンサーの投稿は、フォロワーから「広告」ではなく「個人の率直な感想」として受け止められやすく、通常の広告よりも高い宣伝効果を持つとされています。ステマ規制は、こうした表示の透明性が失われることで消費者の自主的かつ合理的な選択が妨げられる事態を防ぐ目的で導入されました。発注企業としては、単なる形式的な表示義務としてではなく、消費者の信頼を保つための基本ルールとして理解しておく必要があります。なお、諸外国でも同様の趣旨の広告表示規制が導入されており、日本のステマ規制もこうした国際的な潮流を踏まえたものと位置づけられます。グローバルにマーケティングを展開する企業ほど、各国の規制動向を横断的に把握しておくことが求められます。

どのような表示が「ステルスマーケティング」に該当するのか

消費者庁の運用基準では、事業者が自ら行う表示と、事業者が第三者に行わせる表示のうち、広告であることが客観的に判別できないものが規制対象とされています。具体的には次のようなケースが該当し得ます。

  • 企業が金銭や商品を提供してインフルエンサーに投稿を依頼したにもかかわらず、「PR」「広告」「#提供」といった表示がない、または非常に分かりにくい位置にある投稿
  • 従業員や関係者が、第三者になりすまして自社商品の好意的なレビューをSNSやECサイトに投稿する行為
  • 比較サイトやランキングサイトの運営者に報酬を支払い、実態以上に自社商品を上位表示・高評価させているにもかかわらず、その対価関係を明示しない行為
  • 過去に投稿された広告性のある口コミを、後から「広告」表記なしで自社サイトに転載・引用する行為

特に注意すべきは、表示の一部だけを見た消費者が広告と判別できるかどうかが基準となる点です。投稿の冒頭に「PR」と書いてあっても、SNSのタイムライン上で表示が省略され「続きを読む」をタップしないと見えない位置にある場合、規制の趣旨に照らして不十分と判断されるおそれがあります。

消費者庁が公表している運用基準では、判断の観点として、表示内容全体から見て広告であることが客観的に明らかかどうか、「広告」「PR」等の文言が使われていても文字が小さすぎる・他の文言に埋もれているなどで認識しにくくないか、動画広告において当該表示の提示時間が短すぎないか、といった点が挙げられています。単に「PR」という文言をどこかに入れておけば足りるわけではなく、一般消費者が実際に認識できる形で表示されているかどうかが問われる点に留意が必要です。

違反した場合に企業が負うリスク—措置命令・社名公表・刑事罰

景品表示法違反が認定されると、消費者庁または都道府県から「措置命令」が発出されます。措置命令では、該当表示の中止、再発防止策の実施、そして一般消費者への周知(多くの場合、自社サイトや新聞紙上での公表)が命じられます。この過程で事業者名が公表されるため、直接の行政罰以上に、取引先や消費者からの信用低下という形で経営への打撃となるケースが少なくありません。

さらに、措置命令に違反した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という直罰規定が用意されています。ステマ規制単体では課徴金の対象とはされていませんが、同一の表示が同時に「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当すると判断された場合には、別途課徴金納付命令の対象となる可能性もあります。広告の内容次第で複数の規制に同時に抵触するリスクがあることは、経営判断として押さえておくべき点です。

実際の運用においては、消費者庁が悪質性の高い事案から順に措置命令を発出する傾向があり、初期段階では指導や自主的な改善要請にとどまるケースもあります。しかし、いったん措置命令が公表されると、報道やSNSでの拡散によって、命令の内容そのもの以上に企業イメージが毀損する二次的な被害が生じやすい点は見過ごせません。上場企業であれば適時開示の要否も検討課題となり、非上場企業であっても取引先からの信用照会や取引条件の見直しに発展することがあります。

インフルエンサー広告・アフィリエイト広告で陥りやすい落とし穴

実務上、企業が意図せず違反状態に陥る典型的なパターンには次のようなものがあります。

  • 代理店への丸投げ:広告代理店やPR会社に運用を委託している場合でも、最終的な表示責任は発注企業が負います。委託先が適切な表示ルールを徹底しているかを定期的に確認しない限り、リスクは軽減されません。
  • 複数プラットフォームでの表示の食い違い:同じキャンペーンでもInstagram・X・YouTubeなど媒体ごとに表示仕様が異なり、ある媒体では適切に「PR」表記されていても、別の媒体では抜け落ちているというケースが見られます。
  • 過去投稿の放置:施行日以前に行われた投稿であっても、施行日以降も閲覧可能な状態で残っていれば規制の対象となり得ます。古いキャンペーン投稿を棚卸しせずに放置している企業は少なくありません。
  • 自社ECサイトのレビュー欄:社内の担当者や関係者による「サクラレビュー」の投稿は、典型的な違反類型として消費者庁が繰り返し注意喚起している行為です。

また、海外のインフルエンサーやグローバルなアフィリエイトネットワークを利用する場合、当該国の表示規制と日本の景品表示法の基準が異なることに気づかず、日本向けの投稿にも現地基準の簡易な表示のみを適用してしまう例も見られます。越境ECやグローバル展開を進める企業では、国内消費者向けの表示について、改めて日本法の基準に沿っているかを個別に確認する必要があります。

ステマ規制違反を防ぐための社内体制と契約書のチェックポイント

違反を未然に防ぐためには、属人的な注意喚起だけでなく、社内の仕組みとして落とし込むことが重要です。最低限、次のような体制整備をおすすめします。

  • 広告表示に関する社内ガイドラインを作成し、SNS運用担当者・マーケティング部門・法務部門で共有する
  • インフルエンサーやアフィリエイターとの契約書に、広告である旨の明示義務とその具体的な表示方法(文言・表示位置)を明記する
  • 広告代理店・PR会社との業務委託契約において、景品表示法違反が生じた場合の責任分担・是正協力義務を明確化する
  • キャンペーン終了後も定期的に過去投稿を棚卸しし、表示の抜け漏れがないかモニタリングする

チェック体制の実効性を高めるためには、単発のガイドライン策定にとどめず、定期的に運用状況をレビューするサイクルを組み込むことが望ましいといえます。具体的には、キャンペーン開始前の表示文言レビュー、投稿後の抜き取り確認、社内外からの指摘・苦情を受け付ける窓口の設置、年次でのガイドライン見直しという流れを組み合わせることで、担当者の異動や代理店の切り替えがあっても一定の品質を維持しやすくなります。

契約書の作成・見直しでお困りの場合は、企業法務を専門とする弁護士へのご相談をおすすめします。法律事務所LeONEでは、発注者側の実務に即した対応方針をご提案しています。景品表示法に関する相談実績を含め、担当弁護士のご紹介もあわせてご参照ください。

発覚してしまった場合の初動対応

万が一、自社の広告表示について消費者庁や消費者から指摘を受けた場合には、初動対応の速さと的確さが被害の拡大を左右します。まず該当する表示の事実関係を速やかに調査し、問題のある投稿については削除または是正表示への差し替えを行うことが基本です。並行して、再発防止策を文書化し、必要に応じて自主的な公表を検討することで、行政処分に至る前に事態を収束できる可能性が高まります。

初動対応においては、事実関係の調査結果や是正措置の内容を時系列で記録に残しておくことも重要です。仮に行政からの調査が入った場合、自主的な是正の取り組みを説明できる資料があるかどうかで、その後の処分内容や社会的な評価に差が生じることがあります。社内だけで対応方針を判断するのではなく、早い段階で外部の専門家の知見を取り入れることで、対応の適切性と客観性を確保しやすくなります。また、指摘を受けた案件に限らず、同種のキャンペーンを他部署や他ブランドでも展開している場合には、横展開での点検も併せて行うことで、同様の指摘を繰り返し受けるリスクを減らすことができます。

景品表示法は表示の該当性の判断が専門的になりやすい分野です。自社の広告表示に少しでも不安がある場合は、問題が大きくなる前に、早めに無料相談のお問い合わせから弁護士にご相談いただくことをおすすめします。