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知らないと罰則リスク!フリーランス保護新法で中小企業が今すぐ変えるべき業務委託の実務

知らないと罰則リスク!フリーランス保護新法で中小企業が今すぐ変えるべき業務委託の実務

フリーランス保護新法とは?中小企業が知るべき基本

2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス保護新法)が正式に施行されました。この法律は、フリーランスとして働く個人事業主(特定受託事業者)と業務を発注する事業者(特定業務委託事業者)との取引を適正化し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的としています。

「うちはフリーランスを数人使っているだけだから関係ないだろう」と思っている経営者の方も多いかもしれません。しかし、この法律は従業員を1人でも雇用している事業者が業務委託を行う場合に適用されます。規模の大小にかかわらず、フリーランスに業務を発注しているすべての企業に義務が生じるのです。

施行から半年以上が経過した今、「何となく知っているが具体的に何をすればよいかわからない」という経営者・担当者も少なくありません。対応が不十分なまま業務委託を続けた場合、立入検査・行政指導・公表だけでなく、50万円以下の罰金が科されるリスクも現実のものとなっています。本稿では、中小企業の経営者・管理職が今すぐ確認すべき実務ポイントをわかりやすく解説します。

書面交付義務:最初につまずきやすい新ルールの中身

フリーランス保護新法が課す義務の中で、最も基本的かつ多くの企業がすでに違反しているリスクがあるのが書面交付義務です。業務委託を行う際には、以下の事項を書面(または電磁的方法)で明示しなければなりません。

  • 業務の内容(何をしてもらうか)
  • 報酬の額(具体的な金額または算定方法)
  • 支払期日(いつ支払うか)
  • 業務委託期間(いつからいつまでか)
  • 成果物の内容(納品物がある場合)

従来、多くの中小企業では「口頭での依頼」や「メールのやり取りだけで完結」という慣行が一般的でした。しかし、この書面交付義務は業務委託を開始するタイミングで履行しなければならず、後付けで書面を作成しても義務を果たしたことにはなりません。

電子メールやチャットでも対応可能

書面といっても、必ずしも紙の契約書である必要はありません。電子メール・PDFファイル・クラウドサービス上での文書共有など、フリーランスが確認・保存できる電磁的方法であれば対応可能です。ただし、口頭での説明や電話だけでは要件を満たさないため、必ずデジタルでも記録を残すようにしてください。

実務的には、業務委託基本契約書+発注書の組み合わせが最もトラブルが少ないといえます。基本契約で取引の基本ルールを定め、個別案件ごとに発注書で業務内容・報酬・納期を明確化するという運用が推奨されます。

報酬支払いのルール:「60日以内」の義務化がもたらす影響

フリーランス保護新法では、業務委託期間が1か月を超える継続的な取引については、成果物の受領・役務の提供を受けた日から起算して60日以内に報酬を支払うことが義務づけられています。

これは下請法の「60日以内支払い」と同様の趣旨ですが、下請法が適用されない取引(例:資本金が一定額以下の中小企業間での取引)についてもフリーランス新法が適用されるケースがあります。つまり、下請法では問題にならなかった支払いサイトでも、新法では違反となる可能性があるのです。

注意が必要な「請求書締め後90日払い」などの慣行

多くの中小企業では、月末締め・翌月末払い(30日サイト)から月末締め・翌々月末払い(60日サイト)まで、さまざまな支払い条件が設定されています。問題となりやすいのは、受領日からカウントすると60日を超えてしまうケースです。

例えば、毎月15日に成果物を受領し、翌々月末(約75〜80日後)に支払うというルールを設けていた場合、新法違反となる可能性があります。既存の業務委託先との支払い条件を一度洗い出し、60日以内に収まっているか確認することが急務です。

  • 受領日(成果物引渡し日または役務完了日)を正確に記録する
  • 支払日が受領日から60日以内に収まるよう支払い条件を見直す
  • 契約書・発注書の支払い条項を確認・修正する

ハラスメント対策義務:業務委託先にも配慮が求められる時代

フリーランス保護新法の中で、多くの経営者が意外に思うのがハラスメント対策義務の存在です。この義務は、継続的な業務委託(業務委託期間が6か月以上の場合)を行う際に課されるもので、以下の対応が求められます。

  • セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントの相談窓口を設置する
  • ハラスメントが起きた場合の適切な対応体制を整備する
  • フリーランスに対してハラスメントを行わないよう従業員への周知・啓発を行う

従来、ハラスメント対策は雇用している従業員に対するものという認識が一般的でした。しかし、新法は業務委託先のフリーランスも保護対象と明確に位置づけており、自社従業員が業務上の指示出しの中でフリーランスにハラスメント行為を行った場合も、企業側が責任を問われる可能性があります。

「業務上の指示」と「ハラスメント」の境界線

特に注意が必要なのは、過剰な業務修正要求・深夜の連絡強要・人格を否定するような言動です。「お客さん(フリーランス)なんだから強く言っていい」という感覚は新法のもとでは通用しません。社内ルールやハラスメント研修の中に、業務委託先への対応マナーも含めることを検討してください。

よくある違反事例と行政対応のリアル

施行から半年が経過する中で、公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁が連携して新法の周知・執行を進めています。実際にどのような違反が問題になっているのか、典型的なケースを見てみましょう。

事例1:発注書なしの口頭発注

WEBデザイナーに「いつも通りよろしく」とLINEで連絡するだけで業務を開始し、書面を交付していなかったケース。書面交付義務違反に該当し、行政指導の対象となりました。

事例2:成果物の受け取り拒否と報酬減額

納品された成果物に一方的に「イメージと違う」と難癖をつけて受け取りを拒否したり、合意なく報酬を減額したりするケース。新法は受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたき・不当な経済上の利益の提供要請などを禁止行為として明示しています。

事例3:急な取引中止

継続的な業務委託(期間6か月以上)を、十分な予告なく突然打ち切るケース。新法では、継続的取引を中途解約する場合は少なくとも30日前に予告することが義務づけられています。「今月で終わりで」という突然の打ち切りは違反となります。

行政による対応は現時点では指導・勧告が中心ですが、今後は悪質事例について企業名の公表や罰金への移行も想定されます。「まだ大丈夫だろう」という油断は禁物です。

今すぐできる実務対応チェックリスト

以上の内容を踏まえ、中小企業の経営者・担当者が今すぐ取り組むべき対応をチェックリスト形式でまとめます。

契約書・書面関連

  • フリーランスへの業務委託時に必ず発注書(書面または電磁的方法)を発行しているか
  • 発注書に業務内容・報酬額・支払期日・納期がすべて記載されているか
  • 口頭・電話のみで業務依頼している案件がないか洗い出す
  • 既存の業務委託基本契約書が新法の要件を満たした内容になっているか弁護士に確認する

報酬支払い関連

  • 現在の支払い条件(支払いサイト)が成果物受領日から60日以内に収まっているか確認する
  • 60日を超えている取引先がある場合、支払い条件の変更交渉を行う
  • 成果物受領日を記録する仕組みを整備する

ハラスメント・取引適正化関連

  • 業務委託先への連絡・指示方法について社内ルールを整備する
  • ハラスメント相談窓口にフリーランスからの相談も受け付けることを周知する
  • 継続的取引の中途解約は30日前予告を徹底する

弁護士への相談を検討すべきタイミング

以下のような状況にある場合は、早急に弁護士への相談をお勧めします。

  • 長年の慣行で口頭・メールのみで業務委託をしており、契約書が存在しない
  • フリーランスから「報酬が未払い」「急に取引を打ち切られた」と申し立てを受けている
  • 自社の業務委託が新法の対象となるかどうか判断がつかない
  • 既存の契約書が新法の要件を満たしているか確認したい

フリーランス保護新法は、企業とフリーランスがより公正な関係で仕事をするためのルールです。対応を後回しにするほどリスクは高まります。この機会に業務委託の実務を見直し、法令遵守と健全な取引関係の構築を図りましょう。当事務所では、業務委託契約書のレビューや新法対応のご相談を随時受け付けております。お気軽にご連絡ください。