Column
2026/07/14
フリーランス保護法
近年、業務の一部を外部の個人事業主やフリーランスに委託する中小企業が増えています。人手不足への対応やコスト効率化の観点から、こうした業務委託は非常に有効な選択肢です。しかし2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆる「フリーランス新法」により、フリーランスに業務を委託する企業には新たな法的義務が課されることになりました。
「うちは下請法の対象になるような大企業ではないから関係ない」と考えている経営者の方も少なくありませんが、この認識は誤りです。フリーランス新法は資本金の額に関係なく、フリーランス(特定受託事業者)に業務を委託するすべての事業者に適用される可能性があります。違反した場合には公正取引委員会や厚生労働省からの指導・勧告、さらには企業名の公表というレピュテーションリスクも生じます。本記事では、中小企業の経営者・管理職の方が押さえておくべきポイントを実務的に解説します。
フリーランス新法が適用されるのは、「業務委託事業者」が「特定受託事業者」に業務委託をする取引です。特定受託事業者とは、従業員を使用しない個人事業主や、一人で経営する法人(代表者以外に他の役員がなく、従業員もいない法人)を指します。
このような取引に心当たりがある企業は、規模の大小を問わずフリーランス新法の適用対象となる可能性が高いといえます。特に、下請法とは異なり資本金要件がない点が大きな特徴です。従業員数人の小規模企業であっても、フリーランスに発注していれば「業務委託事業者」として義務を負うことになります。
フリーランス新法により、業務委託事業者には主に以下の義務が課されます。
業務委託をする際は、給付の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を書面または電磁的方法(メールやチャットツールなど)により明示しなければなりません。口頭発注の慣行が残っている企業は特に注意が必要です。
フリーランスから給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定め、実際に支払う義務があります。「検収後60日」ではなく「受領後60日」である点に注意してください。従来、月末締め翌々月払いといった長い支払サイトを採用していた企業は、支払フローの見直しが必要になるケースがあります。
1か月以上の継続的な業務委託については、以下のような行為が禁止されます。
フリーランスに対するハラスメント防止のための体制整備義務や、継続的業務委託を中途解除・不更新する場合には原則30日前までに予告する義務も定められています。
フリーランス新法に違反した場合、公正取引委員会や厚生労働省は事業者に対して報告徴収、助言、指導、勧告を行うことができます。勧告に従わない場合には、その旨が公表される可能性があり、取引先や採用市場からの信頼低下という無視できないダメージにつながります。また、フリーランス側からの申告をきっかけに調査が始まるケースも想定されるため、「バレなければ問題ない」という発想は極めてリスクが高いといえます。
さらに、業務委託と称しながら実態として指揮命令下で労働させているような場合には、労働基準法上の「労働者」と判断され、未払い残業代や社会保険料の遡及請求といった、フリーランス新法とは別の重大なリスクが顕在化することもあります。
フリーランス新法への対応は、以下のステップで進めることをおすすめします。
特に契約書の書式が未整備のまま口頭やメールの簡単なやり取りで発注を続けている企業は、早急な見直しが必要です。契約書の不備は、フリーランス新法違反のリスクだけでなく、後々の報酬未払いトラブルや業務範囲をめぐる紛争の火種にもなります。
フリーランス新法は、企業規模を問わず個人事業主に業務委託を行うすべての事業者に関係する法律です。「知らなかった」では済まされない行政指導や企業名公表のリスクがある一方で、適切な契約書と支払フローを整備することは、優秀なフリーランス人材との信頼関係を築き、安定した業務委託関係を継続するための土台にもなります。この機会に自社の業務委託の実態を点検してみてはいかがでしょうか。
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