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ステマ規制とは?企業が知るべき広告表示リスクと対応策

2026/09/01

景表法

ステマ規制とは?企業が知るべき広告表示リスクと対応策

2023年10月施行のステマ規制により、広告を外部に依頼した企業側もPR表記の欠如を理由に景品表示法違反として措置命令や社名公表を受ける可能性があります。規制対象の範囲と、自社が今日から整えるべき社内チェック体制を示します。

ステマ規制とは何か——景品表示法における位置づけ

2023年10月1日、景品表示法に基づく告示として、いわゆる「ステマ規制」が施行されました。正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景品表示法第5条第3号の指定告示として新たに規制対象に加えられたものです。

この規制のポイントは、規制の名宛人が「表示を行った個人」ではなく、あくまで「広告を依頼した事業者」である点にあります。インフルエンザマーケティングやアフィリエイト広告を第三者に委託する場合、実際に投稿を行うのはインフルエンサーやサイト運営者であっても、法的な責任を負うのは依頼主である企業側です。

景品表示法はもともと、優良誤認表示(品質を実際より優れていると誤認させる表示)や有利誤認表示(価格や取引条件を実際より有利と誤認させる表示)を規制の中心としてきました。ステマ規制はこれらとは異なり、表示の「内容」ではなく表示の「出所」——広告であることを隠している点——を問題視する新しいタイプの規制である点に特徴があります。

御社が広告代理店やインフルエンサーに商品・サービスの紹介を依頼している場合、この規制は既に「自社の問題」として捉える必要があります。特に近年はSNSを活用した販促施策を外部に委託する中小企業が増えており、規制の存在を知らないまま契約を結んでいるケースも少なくありません。

大企業であれば広告審査部門やリーガル部門が事前にチェックする体制を持っていることも多いですが、中小企業ではマーケティング担当者や代表者自身が広告発注の最終判断を担っていることが一般的です。だからこそ、経営層自身がステマ規制の基本的な仕組みを理解しておくことが、リスク管理の第一歩になります。

規制対象となる広告表示の範囲

ステマ規制の対象は、SNS投稿に限りません。以下のような表示が広く対象となり得ます。

  • SNS(X、Instagram、YouTube等)でのインフルエンサーによる商品紹介投稿
  • ブログやまとめサイトでの商品レビュー・比較記事
  • ECサイトのレビュー欄への依頼投稿
  • アフィリエイト広告における第三者目線を装った紹介記事

これらの表示について、一般消費者から見て「事業者の広告である」ことが客観的に判別できない場合、たとえ「良い商品だから紹介してほしい」という軽い依頼であっても規制の対象となります。逆に「PR」「広告」「〇〇社提供」といった表示が明瞭に付されていれば、原則として規制の対象外です。

重要なのは、表示の形式ではなく「一般消費者が判別できるかどうか」という実質判断である点です。文字が小さすぎる、動画の説明欄の奥に埋もれている、他の大量のハッシュタグに紛れている、といったケースは実質的に判別困難とみなされるリスクがあります。

消費者庁が公表している運用基準では、「広告」「宣伝」「PR」といった文言を用いる場合、日本語表記であること、かつ文章の冒頭や末尾など消費者が認識しやすい位置に配置することが望ましいとされています。「〇〇社から商品提供を受けています」のように、事業者との関係性が分かる形で記載する方法も有効とされています。逆に「AD」等の英語表記のみで、意味を理解できない消費者が一定数存在すると評価される場合は、不十分と判断される可能性があります。

「自主的な投稿」との違いに注意

インフルエンサーが自主的に商品を購入し、対価なく紹介した投稿は、事業者の依頼に基づく表示ではないため原則として規制の対象外です。しかし、無償でサンプルを提供した場合や、投稿内容について発注者が事前に指示・確認を行っていた場合は、「事業者の表示」と評価される可能性が高まります。御社が「対価を払っていないから大丈夫」と考えている場合でも、サンプル提供や投稿内容へのフィードバックの実態次第では規制対象となり得る点に注意が必要です。

発注企業が負うステマ規制違反リスク——措置命令・社名公表

ステマ規制に違反した場合、下請法違反のような直接的な課徴金の規定はありませんが、消費者庁による措置命令の対象となります。措置命令が出されると、違反事実とともに事業者名が公表され、加えて再発防止策の実施や一般消費者への周知(新聞広告等)が命じられることもあります。

中小企業にとって、行政処分そのものの金銭的負担以上に深刻なのは、社名公表によるレピュテーションの毀損です。取引先や採用候補者がインターネットで社名を検索した際に、行政処分の事実が表示され続けるリスクは、事業規模が小さい企業ほど相対的な打撃が大きくなります。

「広告代理店に任せていたので知らなかった」という説明は、消費者庁に対しても取引先に対しても通用しません。委託先の管理責任は、最終的に発注者である企業に帰属します。

また、措置命令に至らない場合であっても、消費者庁からの指導や自主的な報告徴収の段階で、社内対応に相応の時間とコストがかかります。事実関係の調査、委託先とのやり取りの精査、再発防止策の策定など、法務担当者が不在の中小企業ほど対応の負担は大きくなりがちです。行政対応が発生してから慌てて弁護士に相談するのではなく、平時から契約書と社内体制を整えておくことが、結果的に対応コストを抑えることにつながります。

取引先からの信用にも影響する

BtoB取引が中心の企業であっても油断はできません。自社の広告表示が問題視され社名が公表された場合、既存の取引先や金融機関が「コンプライアンス体制に不安がある企業」と評価し、今後の取引条件や与信判断に影響が及ぶ可能性があります。特に元請企業から下請企業へのコンプライアンス調査が行われる業界では、こうした行政処分歴が取引継続の可否に関わる場合もあります。

広告委託契約に盛り込むべき条項

広告代理店やインフルエンサーに宣伝を委託する際は、契約書の段階でステマ規制への対応を明文化しておくことが有効です。具体的には、以下のような条項の整備が考えられます。

  • PR表記・広告表記を投稿に明示することを委託先の義務として明記する条項
  • 表記の要否・方法について事前に発注者が確認・承認する手続き
  • 委託先が表記義務を怠った場合の是正・損害賠償に関する条項
  • 投稿内容の事前確認および保存義務

こうした条項は、実際に問題が生じた際の責任の所在を明確にするだけでなく、委託先に対して規制遵守を促す牽制効果も持ちます。特に、投稿内容や表記方法について「発注者が事前に確認する」という手続きを契約書に明記しておくことは、後日トラブルが発生した際に「発注者としてできる限りの確認義務を尽くしていた」ことを示す材料にもなります。

既存契約書の見直しポイント

すでに広告代理店やインフルエンサーと契約を締結している場合は、次のような観点で既存の契約書を点検することをおすすめします。

  • 表記義務についての記載が一切ない、または努力義務にとどまっている
  • 委託先の違反によって発注者が行政処分を受けた場合の求償条項がない
  • 投稿内容の事前確認・修正依頼に関する手続きが定められていない

これらに該当する場合、既存の契約書には見直しの余地があります。契約書の作成・見直しでお困りの場合は、企業法務を専門とする弁護士へのご相談が有効です。法律事務所LeONEでは、発注者側の実務に即した契約書の点検・修正をご提案しています。

社内で今すぐできるチェック体制の整備

契約書の整備と並行して、社内の運用体制を見直すことも重要です。次のようなステップから着手することをおすすめします。

  • 広告表示ガイドラインの策定:PR表記のルール、確認フローを文書化する
  • 委託先への周知:契約前にステマ規制の趣旨と表記義務を説明する
  • 投稿前チェック体制:公開前に表記の有無を担当部署が確認する運用にする
  • 過去投稿の棚卸し:既に公開済みの広告投稿についても表記状況を確認する

特に過去投稿の棚卸しは見落とされがちですが、消費者庁は現在も表示されている投稿を調査対象とするため、過去に依頼した投稿であっても是正の対象になり得ます。SNSやブログの投稿は時間の経過とともに担当者の記憶からも薄れやすいため、定期的な棚卸しをルーティン化しておくことが望まれます。

また、社内にマーケティング担当者が一人しかいない、あるいは広告業務を兼務で担っているといった体制の企業では、チェック機能が形骸化しやすい傾向があります。可能であれば、広告表示の最終確認を法務担当や経営層など別の視点を持つ人物が行う、いわゆるダブルチェックの仕組みを設けることも有効です。社内リソースだけでの対応が難しい場合は、外部の弁護士に運用ルールの策定支援を依頼するのも一つの方法です。御社の業種・広告手法に応じた具体的な対応については、無料相談のお問い合わせから一度ご相談ください。

まとめ——広告委託は「知らなかった」では済まされない

ステマ規制は、広告を実際に投稿する個人ではなく、それを依頼した企業に責任を課す制度です。御社が広告代理店やインフルエンサーに宣伝を委託している場合、契約書上の表記義務の明文化と、社内での確認体制の整備は避けて通れない課題といえます。

景品表示法まわりの規制は近年強化が続いており、ステマ規制以外にも対応すべき論点は少なくありません。優良誤認表示や有利誤認表示、打消し表示の適正化など、広告表現に関わる規制は複数存在し、それぞれ判断基準も異なります。自社の広告実務やこれまでの契約書に不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、リスクを未然に防ぐ体制を整えておくことをおすすめします。

広告委託は、企業の売上を伸ばすための重要な施策である一方、対応を誤れば信用を大きく損なうリスクも抱えています。契約書の整備、社内チェック体制の構築、そして万が一の際の相談窓口の確保という3つの備えを、早い段階から進めておくことが望まれます。当事務所の弁護士紹介は担当弁護士のご紹介のページからご覧いただけます。