Column
2026/10/08
景表法
ダークパターンとは、消費者を誤認させて購入や契約へ誘導するWebデザインのことで、景表法・特商法の違反に直結します。本記事では、EC・サブスク事業者が問われやすい典型パターンと法的リスク、自社サイトの点検手順までを企業の視点で整理します。
ダークパターン(ディセプティブ・デザイン)とは、Webサイトやアプリの画面設計によって、消費者が本来望まない選択をするよう誘導する手法の総称です。OECDや消費者庁でも調査・検討が進められており、国内外で規制の目が厳しくなっています。
日本には現時点で「ダークパターン禁止法」という単独の法律はありません。しかし、それは規制がないという意味ではありません。景品表示法、特定商取引法、消費者契約法、個人情報保護法といった既存の法律が、個々のダークパターンに適用されるという構造になっています。
ダークパターンの多くは、マーケティング担当者や制作会社が「コンバージョン率を上げるための工夫」として導入したものです。担当者に悪意がなくても、表示の結果として消費者が誤認すれば、責任を問われるのは表示主体である事業者(自社)です。制作を外部に委託していても、発注した企業の責任が免れることはありません。
ダークパターンのうち、価格や取引条件、商品の品質に関わるものは、景品表示法の不当表示に該当する可能性があります。
価格その他の取引条件について、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示です。ダークパターンとの関係では、次のような表示が典型例です。
特に二重価格表示については、消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)において、比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかどうかが判断基準とされています。御社のセール表示の「通常価格」に、実際の販売実績の裏付けがあるかを確認することが重要です。
商品・サービスの品質や内容について、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示です。「満足度98%」「ランキング1位」といった表示に客観的な根拠がない場合や、調査対象・調査方法が恣意的な場合には、優良誤認と判断されるおそれがあります。
2023年10月から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)も景表法の不当表示に指定されています。サクラレビューや、事業者が関与した口コミを第三者の自然な評価のように見せる表示も、ダークパターンの一類型として注意が必要です。
サブスクリプションや定期購入ビジネスでは、景表法に加えて特定商取引法の規制が特に重要です。
2022年6月施行の改正特商法により、通信販売の申込みの最終確認画面には、次の事項を明確に表示することが義務付けられました。
あわせて、「この画面の操作が申込みになる」ことを誤認させる表示や、上記事項について人を誤認させる表示も禁止されています。たとえば、「無料お試し」と表示したボタンを押すと有料の定期契約が成立する設計は、典型的な違反例です。
最終確認画面の表示義務に違反した表示によって消費者が誤認して申込みをした場合、消費者はその申込みを取り消すことができます(特商法15条の4)。つまり、違反があれば行政処分のリスクだけでなく、売上そのものが巻き戻されるリスクがあるということです。
2023年6月施行の改正消費者契約法では、消費者からの求めに応じて契約の解除に必要な情報を提供する努力義務や、解約料の算定根拠を説明する努力義務が事業者に課されました。また、特商法上も、解約を妨げるために不実のことを告げる行為は禁止されています。申込みと比べて解約手続が著しく煩雑な設計は、法的リスクだけでなく、消費者庁や国民生活センターへの苦情の集中という形でも顕在化しやすい点に注意が必要です。
ダークパターンが法令違反と判断された場合、企業は複数のペナルティを同時に受ける可能性があります。
最終確認画面の表示義務違反などは、業務改善指示や業務停止命令の対象となるほか、刑事罰(法人には最高1億円以下の罰金)の対象にもなります。業務停止命令を受けると、一定期間、通信販売事業そのものができなくなるため、EC事業者にとっては致命的な打撃となりかねません。
行政処分は消費者庁のWebサイトで公表され、報道やSNSで拡散されます。取引先の与信審査や、プラットフォーム(モール・決済代行会社)の審査に影響することもあり、課徴金の金額以上に事業継続へのダメージが大きいのが実情です。
まずは現状の自社サイト・アプリを、消費者の目線で実際に操作しながら点検することをおすすめします。以下は、発注者・運営者として最低限確認しておきたい項目です。
点検の結果、グレーな表示が見つかった場合には、早期に修正することが最大のリスク対策になります。表示の適法性の判断に迷う場合は、景表法・特商法の実務に詳しい弁護士へ確認するのが確実です。担当弁護士のご紹介ページでは、当事務所で消費者法分野を担当する弁護士の経歴をご覧いただけます。
一度サイトを修正しても、キャンペーンのたびに新たなダークパターンが生まれてしまっては意味がありません。景表法26条は、事業者に対して表示を適正に管理するための体制整備(管理措置)を義務付けており、次のような仕組みづくりが求められます。
LP制作や広告運用を外部に委託している企業は、委託先との契約書に、関係法令の遵守義務、表示内容の事前承認手続、違反時の責任分担を明記しておくことが重要です。前述のとおり、対外的な責任を負うのは表示主体である発注企業ですから、委託先任せにせず、最終的な承認権限を自社に残す設計にしておく必要があります。
ダークパターンが生まれる根本原因は、短期的なコンバージョン率や解約率だけを評価指標にしていることにある場合が少なくありません。苦情件数や返金率、取消し件数なども指標に加え、「誤認による売上」を評価しない仕組みにすることが、持続的な再発防止につながります。
ダークパターン対策は、法令遵守だけでなく、顧客からの信頼を長期的に獲得するための投資でもあります。法律事務所LeONEでは、EC・サブスク事業者の表示審査や、利用規約・最終確認画面の設計レビュー、社内の表示管理体制の構築まで、企業側の実務に即したサポートを行っています。自社サイトの表示に不安がある場合は、無料相談のお問い合わせからお気軽にご連絡ください。