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ある日突然、会社に捜索が入ったら?――中小企業経営者が知っておくべき刑事事件の初動対応

2026/08/07

企業法務

ある日突然、会社に捜索が入ったら?――中小企業経営者が知っておくべき刑事事件の初動対応

「うちの会社に限って刑事事件など関係ない」――多くの中小企業経営者はそう考えているのではないでしょうか。しかし、取引先の不正会計に巻き込まれるケース、従業員が起こした業務上の不正、下請法や労働法規の違反、さらには思わぬ形での贈収賄事件への関与など、企業が刑事手続きの当事者となるきっかけは決して他人事ではありません。ある日突然、警察や検察の捜査員が会社に来て「家宅捜索」を行う事態になったとき、経営者がどう初動対応するかによって、その後の会社の存続や社会的信用に大きな差が生まれます。本コラムでは、企業法務を専門とする弁護士の立場から、中小企業が刑事事件に巻き込まれた際に押さえておくべき初動対応の実務ポイントを解説します。

1. 家宅捜索・強制捜査とはどのようなものか

捜査機関が行う捜査には、対象者の同意を前提とする「任意捜査」と、裁判所が発付した令状に基づいて強制的に行う「強制捜査」があります。家宅捜索(捜索差押え)は後者にあたり、会社や役員の自宅に捜査員が令状を持って訪れ、書類やパソコン、サーバー、スマートフォンなどを差し押さえていく手続きです。

1-1 任意の事情聴取との違い

任意の事情聴取であれば拒否することも理論上可能ですが、令状に基づく強制捜査は拒否できません。捜索差押許可状が呈示された時点で、会社側には受忍義務が生じます。

1-2 対象になりうる典型的なケース

  • 従業員による横領・背任などの社内不正が発覚した場合
  • 取引先や第三者との間で詐欺・贈収賄などの疑いが生じた場合
  • 下請法、独占禁止法、労働基準法などの行政法規違反が刑事事件化した場合
  • 会社が被害者側であっても、証拠保全のために取引先や関係先として捜索対象になる場合

つまり、自社が直接の被疑者でなくても、関係先として捜索を受ける可能性がある点は見落とされがちです。

2. 捜索当日にまずすべきこと

捜索員が会社を訪れた際、経営者や現場責任者がパニックになってしまうと、後の対応に大きな支障が出ます。まずは以下の点を落ち着いて確認・実行することが重要です。

2-1 令状の確認

捜索差押許可状には、捜索すべき場所、差し押さえるべき物、被疑事実の要旨などが記載されています。令状の記載範囲を超えた捜索・差押えが行われていないかを必ず確認してください。範囲外の書類や機器まで持ち出されそうになった場合は、その場で異議を述べ、後の記録に残すことが重要です。

2-2 弁護士への即時連絡

捜索が開始されたら、可能な限り早い段階で顧問弁護士や刑事事件に強い弁護士に連絡を取り、状況を共有してください。捜索中であっても電話で相談することは可能です。弁護士が到着するまでの間、現場責任者は捜査員の指示に従いつつも、不用意な発言は避けるべきです。

2-3 差押品リストの作成・保管

捜索の終了時には、差押調書・押収品目録が交付されます。何がいつ、どこから押収されたかを社内でも独自に記録しておくことで、後日の業務再開や証拠開示請求の際に役立ちます。

3. 社員・役員への説明と情報管理

捜索が入ったという事実は、社内外に瞬く間に広がります。経営者が情報発信を怠ると、憶測やデマが独り歩きし、取引先や従業員の動揺を招きかねません。

3-1 社内向けの説明

捜索の事実そのものを隠すことは現実的ではないため、事実関係を最小限かつ正確に伝えることが重要です。捜査の内容について社員が個々に取材や問い合わせを受けた場合の対応方針(原則として広報担当者や弁護士に一本化する等)も、早い段階で周知しておく必要があります。

3-2 証拠隠滅と誤解されないための注意

捜索後に慌てて関連書類やデータを削除・廃棄する行為は、たとえ悪意がなくても証拠隠滅と評価されるリスクがあります。社内での資料整理やデータバックアップの取り扱いについては、必ず弁護士の助言を得たうえで実施してください。

3-3 取引先・金融機関への対応

捜索の事実が報道された場合、取引先や金融機関から説明を求められることがあります。事実と評価(会社としての見解)を分けて説明し、断定的な言い切りを避けることが、後の法的リスクを抑えるうえで重要です。

4. 役員・従業員個人の刑事責任にも注意

会社が捜索対象になった場合、法人としての責任だけでなく、代表者や担当役員個人が被疑者・参考人として取調べを受ける可能性もあります。特に「両罰規定」が設けられている法律(労働基準法、独占禁止法、下請法など多数)では、従業員の違反行為について法人と行為者本人の双方が処罰対象となり得る点に注意が必要です。役員自身が任意の事情聴取を求められた場合も、単独で応じる前に弁護士に相談し、供述内容や立会いの可否について助言を受けることをお勧めします。

5. 弁護士に相談すべきタイミングと役割

「捜索が入ってから弁護士に相談すればよい」と考える経営者も少なくありませんが、実際には捜索の予兆となる任意の照会や問い合わせがあった段階で弁護士に相談しておくことが望ましいといえます。弁護士が早期に関与することで、次のような対応が可能になります。

  • 令状の適法性チェックと立会い
  • 社内での供述方針・証拠管理方針の助言
  • 取引先・報道機関対応の窓口一本化
  • 行政処分や民事責任への波及を見据えた対応方針の策定

また、平時から企業向けに危機管理体制(有事対応マニュアルの整備、緊急連絡網、社内規程の見直しなど)を構築しておくことで、実際に事態が発生した際の混乱を最小限に抑えることができます。

6. まとめ――「まさか」のときに備える体制づくりを

刑事事件への関与は、多くの中小企業経営者にとって想定外の事態です。しかし、想定外だからこそ、事前の備えと初動対応の質が、その後の会社の存続や信用回復のスピードを大きく左右します。捜索・差押えという強制捜査が実施された場合には、感情的にならず、令状の確認、弁護士への即時連絡、社内外への適切な情報管理という基本を徹底することが何より重要です。

また、日頃からコンプライアンス体制を整備し、有事対応のシミュレーションを行っておくことで、いざというときに冷静な対応がとれるようになります。自社の危機管理体制に不安がある方、実際に捜査機関からの接触や照会があり対応にお困りの方は、早めの専門家への相談が被害の拡大防止につながります。

今回のテーマについて具体的なご状況でお悩みの方は、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。

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