Column
2026/08/24
企業法務
サプライチェーンの人権デューデリジェンス対応を怠ると、大手取引先との契約解除や新規受注機会の喪失につながります。本記事では自社が取るべき実務対応と契約書見直しのポイントを解説します。
「人権デューデリジェンス」という言葉を、大企業だけの話だと考えていないでしょうか。近年、経済産業省が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を受けて、上場企業や大手メーカーが自社の取引先に対して人権に関する調査票や誓約書への回答を求めるケースが急増しています。
調査票の内容は、強制労働や児童労働の有無だけでなく、従業員の労働時間管理、外国人技能実習生の受け入れ状況、下請け企業への支払い条件など多岐にわたります。御社が直接の取引先でなくても、二次・三次サプライヤーとして調査対象に含まれることも珍しくありません。
つまり、人権デューデリジェンスは「発注する側」としても「受注する側」としても、避けて通れない実務課題になりつつあるのです。
背景には、国際的な人権規制の強化があります。EUでは2024年に企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)が成立し、域内で事業を行う大企業に対してサプライチェーン全体の人権・環境リスク調査を義務付けました。日本企業がEU企業と取引する場合、間接的にこの規制の影響を受けることになります。
国内でも、経済産業省のガイドラインは法的拘束力こそないものの、金融機関の融資審査や大手企業の取引先選定基準に組み込まれる動きが広がっています。人権デューデリジェンスへの対応状況が、取引の継続可否を左右する時代になりつつあると言えるでしょう。
人権デューデリジェンスへの対応を怠った場合、まず懸念されるのが既存取引先からの契約解除や取引縮小です。大手企業は自社のサプライチェーン全体のリスクを管理する立場上、調査に応じない、あるいは是正措置を講じない取引先との関係を見直さざるを得ません。
さらに、人権侵害の疑いが報道やSNSで拡散した場合、自社だけでなく発注元企業のブランドイメージにも影響が及びます。近年はESG投資の観点から、投資家や金融機関が人権リスクを取引先評価に組み込む例も増えており、知らないうちに評価を下げられている可能性もあります。
こうしたリスクを早期に把握し対応方針を固めておくためには、契約書や社内規程を専門家の視点でチェックしておくことが有効です。対応に不安がある場合は、早めに無料相談のお問い合わせから状況をご相談いただくことをおすすめします。
人権デューデリジェンスへの対応は、大掛かりな専門部署を新設しなくても着手できます。まず取り組むべきは以下の3点です。
特に中小企業の場合、経営者自身が調査票対応に追われて本業に支障をきたすケースも見られます。回答のひな形をあらかじめ準備し、法務担当や顧問弁護士と連携できる体制を整えておくことで、突発的な調査依頼にも慌てず対応できるようになります。
社内体制の整備と並行して重要なのが、取引先との契約書の見直しです。大手企業との新規契約や更新のタイミングで、以下のような条項の追加を求められるケースが増えています。
一方で、これらの条項を安易に受け入れると、些細な指摘でも契約解除の対象となるなど、自社にとって過度に不利な内容になっているケースも少なくありません。契約書の文言は、義務の範囲や是正期間の猶予を明確にするなど、実務上無理のない内容に調整することが重要です。
契約書の作成・見直しでお困りの場合は、企業法務を専門とする弁護士へのご相談をおすすめします。法律事務所LeONEでは、発注者側・受注者側双方の実務に即した契約書チェックを行っています。
人権デューデリジェンスは、一度体制を整えれば終わりというものではなく、法改正や取引先からの要請内容の変化に応じて継続的に見直していく必要があります。特に、取引先から新たな調査票が届いたタイミングや、契約更新の時期は、契約内容や社内対応フローを見直す好機です。
「何から手を付ければよいかわからない」「調査票にどう回答すべきか判断に迷う」という場合は、早めに専門家に相談することでリスクを最小限に抑えられます。契約書のひな形整備や社内規程の見直しなど、具体的な進め方については担当弁護士のご紹介ページから、自社の状況に合った相談先をご確認ください。
人権デューデリジェンスへの対応は、コストではなく、取引先からの信頼を維持し新たなビジネスチャンスを広げるための投資と捉えることが、これからの企業経営には求められています。