Column
2026/08/03
企業法務
「プラスチック資源循環促進法」という名前を耳にしたことはあっても、自社が実際に何をしなければならないのか、正確に把握している中小企業経営者は多くありません。しかし、この法律は小売業・飲食業・宿泊業・洗濯業など、皆様の身近な業種を名指しで対象としており、対応を怠ると行政指導や企業名の公表といったリスクにつながります。本稿では、企業法務を専門とする弁護士の視点から、プラスチック資源循環促進法の概要と、中小企業が押さえておくべき実務対応のポイントを整理します。
正式名称を「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」といい、2022年4月に施行されました。海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題への対応、そして資源の有効活用という観点から、プラスチック製品の設計・製造段階から廃棄・リサイクル段階までのライフサイクル全体を通じて、資源循環を促進することを目的としています。
この法律の特徴は、製造事業者だけでなく、プラスチック製品を「提供する」小売・サービス業や、事業活動でプラスチックを「排出する」あらゆる事業者にも義務を課している点にあります。つまり、製造業でなくても、日常的にプラスチック製品を扱う中小企業であれば、何らかの形で対応を求められる可能性が高いのです。
法律が特に注目しているのが、以下のような使い捨てプラスチック製品(特定プラスチック使用製品)です。
これらを提供する事業者のうち、前年度の使用量が5トン以上である場合、削減のための取組が義務付けられます。5トンという基準は決して大きな数字ではなく、複数店舗を展開する中小の飲食チェーンやホテル、クリーニング店であれば十分に該当し得る水準です。
対象事業者には、以下のような取組の中から、自社の実情に応じた措置を講じることが求められます。
重要なのは、必ずしも「全面禁止」や「即時有料化」だけが正解ではないという点です。自社の業態やコスト構造に応じて、複数の選択肢の中から現実的な対応を選べる制度設計になっています。逆に言えば、「何もしない」という選択肢は用意されていません。
特定プラスチック使用製品の提供量が特に多い事業者(多量提供事業者)が、削減の取組を著しく怠っていると判断された場合、主務大臣は以下のような措置を段階的に講じることができます。
実務上、罰金そのものよりも重大なのは「企業名の公表」による風評リスクです。SNSが発達した現在、行政による公表は瞬時に拡散し、消費者からの信頼失墜や取引先との契約見直しに直結しかねません。また、近年では大手取引先が仕入先・委託先に対して環境配慮の取組状況を確認し、サプライチェーン全体での対応を求めるケースも増えています。プラスチック対応の遅れが、既存取引の継続可否や新規契約の可否を左右する事例も出てきているのが実情です。
特定プラスチック使用製品の提供事業者に該当しない企業であっても、油断はできません。プラスチック製品の設計・製造を行う事業者には「環境配慮設計」に関する指針への適合が求められ、国の認定を受けることで公共調達等での優遇措置を受けられる仕組みが用意されています。
また、事業活動に伴って生じるプラスチック使用製品廃棄物の排出事業者(オフィスや工場からプラスチックごみを排出するすべての事業者が該当し得ます)には、排出の抑制及び再資源化等を促進するための必要な措置を講じる努力義務が課されています。市区町村と連携した再商品化計画の認定制度も設けられており、廃棄物処理コストの見直しを検討する契機にもなり得ます。
プラスチック資源循環促進法への対応は、法務部門を持たない中小企業にとって後回しにされがちなテーマです。しかし、以下のステップを踏むことで、無理なく対応を進めることができます。
これらは一度整備すれば終わりというものではなく、事業拡大や店舗展開に伴って継続的な見直しが必要な事項です。自社だけで判断に迷う場合は、専門家に相談しながら体制を構築することをお勧めします。
プラスチック資源循環促進法は、環境問題への対応という側面だけでなく、行政指導や公表リスク、取引先からの要請といった形で、中小企業の事業継続にも直接影響し得る法律です。「自社は関係ない」と思い込まず、まずは自社の業種・使用量が対象に該当するかどうかを確認することが第一歩となります。
自社の対応状況に不安がある方、取引先から環境配慮に関する説明を求められてお困りの方は、ぜひLeONE法律事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。社内規程の整備やサプライチェーン対応を含めた企業法務全般のサポートについては、企業法務サービスの詳細はこちらからご確認いただけます。